福島県教育センター所報ふくしま No.53(S56/1981.10) -030/034page

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<アイディア紹介>

「文字と式」における乗法のきまりの指導の一考察

富岡町立富岡第一中学校教諭  佐々木 健 二


1.はじめに
(1)文字と式の指導のねらい
  数学で使われる文字は,小学校5年生で□や△の代りにa,xなど一部の文字が導入され,数量の関係や法則を簡潔にかつ一般的に表したり,読み取ったりすることを取り扱い,6年生では,比例,反比例などの学習を通して式をより一般的に用いようとする考え方を漸次伸ばすように指導してきているが,その取り扱いは不十分であるし,不完全である。そこで,中学1年生で,aやxなど特定の文字に限らず,いろいろな文字を自由に使用できるようにし,文字を用いて数量の関係や法則を式に表現したり,表現した式を操作する能力を一層伸ばすことが一年生の指導目標になる。
(2)今までの文字式の指導の反省
  今までの「文字と式」の指導において,文字式の計算技能を高めることを急ぐあまり
 1 文字の意味や文字の働きについての指導が不十分であり,理解力も不完全なままで次の指導内容に進んでいた。
 2 文字式の計算では,文字式の計算の技能の習熟に指導の重点をおきすぎた。
 3 文字使用のきまりを生徒の理解の様子も考えずに機械的に押しつけて納得させようとしていた。(意味的理解を無視していた。)
 4 文字や文字式の抽象化や形式化をいそぎすぎた。
 このような結果から,生徒の文字に対する意味や文字式の計算の方法などの理解が不十分なままにいろいろな計算を機械的に練習させていた結果,生徒は文字やその計算に対して大きな抵抗を示し,数学を嫌いにする原因を作っていったと思われる。
2.教科書での取り扱い
 1年生の数学「文字と式」の「§2 文字使用のきまり」(東書版 新しい数学 P60)では「積の表し方」の箇所では次のようになっている。
2 文字使用のきまり
  文字を使った式では、ふつう次のように表す。
 積の表し方
1 文字の混じった乗法では、×の記号をはぶく。
2 文字と数の積では、数字を文字の前に書く。

 と記述してあり,その後,例題があり,(注意)の説明があり,問1,問2,例2,問3という構成になっている。ここで感じたのは,文字式の乗法のきまりを理解させるのになんらの具体的な説明や意味づけがされてなく,すぐに乗法のきまりが書いてある。これだけでは,生徒に文字式の乗法のきまりを理解させるのに不十分と考えて何か工夫して指導をする必要性を感じた。
3 実践例
(1)工夫したこと
 1「文字と式」の乗法のきまりを
  ア.生徒にできるだけ具体的にわかりやすく
  イ.生徒の実態に合った
  ウ.できるだけ視覚にうったえ,直観的に理解させることができ
  エ.小学校の既習事項と十分関連のある
 教材としては「面積図」を使っての指導であり,それを活用すれば生徒にとって具体的で直観的な理解が得られると思う。
(2)授業成立のための基礎事項
 1 面積の意味の復習
この長方形の面積は2cmX3cm=6平方センチメートル であるが,この6平方センチメートルの6は何を表しているか確認する。つまり,1平方センチメートル という単位面積が6つあるという意味を強調しておく。
2cmX3cmの図
 2 長方形の面積,直方体の体積の公式の復習
  ○長方形の面積=たて×よこ
  ○直方体の体積=たて×よこ×高さ
  を強調する。
(3)課題提示
 1「次の面積を求めよ。」として次の図を提示する。

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