福島県教育センター所報ふくしま No.54(S56/1981.12) -009/034page
生活指導学習意欲を育てる生徒指導
経営研究部 斎 藤 洸 旦〔聞い 1〕「学習意欲」とはどういうものでしょうか。
「答え」 学習意欲を「やりたい」という欲求のように考えがちですが,それでは不十分です。「やりたい」という欲求は学習意欲の背景になっていますが,意欲そのものではありません。これだけですと「やりたい」から「やる」,「やりたくなければ」「やらない」となり,いわゆる「遊び」の姿勢になってしまいます。真の意欲は,意志が裏から支えているものでなければなりません。結局,「やりたい」「やりたくない」にかかわらず,「やらねばならない」と決断して,「やる気」を起こして学習活動に立ち向かうのが,心理学でいう学習意欲であるといわれています。
学習意欲は,生徒の主体性に深くかかわっているもので,他人の代行は絶対に不可能を性格を持っています。したがって,学習意欲があるかどうかが学習成立の必須の前提になってきます。
今学校で,意欲の減退が学業不振や非行の原因になっていることは周知の事実です。したがらて,学習意欲を育てることが学校の中心課題となります。ところで,意欲の情意的,心理的な性質からみて,学習意欲を育てるのに,生徒指導の上からのアプローチが,非常に大切だといえるでしょう。〔同い 2〕 「学習意欲」にかかわる指事が学業指導であるといわれますが………。
「答え」 学習指導は教科担任が教科の知識や技能を教材によって指導する機能であるのに対して,学業指導はすベての教師が学校におけるすべての学習活動において,一人ひとりの生徒が自主的に学習に取り組むように援助・指導する機能であるといわれています。もちろんこの二つはお互いに深くかかわっているもので切り離すことはできませんが,学習指導が生徒の一人ひとりの情緒的な面を見逃がしてきた反省から,生徒指導の立場に立つ学業指導が強調されてきました。その内容は,
○ 学校生括にどのように適応させるか
○ 進路指導をどのようにするか
○ 学力の診断と治蝶をどのようにするか
○ 学習の技術・学習の習慣をどう開発するか
○ 学習意欲をどう育てるか
などがあげられますが,現在の学校の状況では,特に学習意欲の指導が中心になるでしょう。〔問い 3〕 「学習意欲」を育てるにはどうし たらよいでしょうか。
〔答え〕
まず共感的理解から始める
教師としての権威を持って指示的・命令的に生徒に接しても,生徒は簡単に心を開いてはくれません。ロジャースは,カウンセリングにおける非指示的・許容的態度ということを説いていますが,生徒の身になって受容的,共感的態度で接すれば,生徒は必ず心を開いてくるでしょう。そして,そこから生まれる人間的触れ合いによって,信頼感が育ってきます。この信頼感から学習意欲の火がともされます。生徒は,教師を信頼して自己を語ることで自己理解し,教師の励ましで自己指導して自己実現(学習意欲)へと変容していきます。普通に考えても,教師から理解されているという安心感や書びが,学校生活へのエネルギーになっている例はたくさんみられます。それを学習意欲に点火するのは容易です。生命力のない学習意欲などというものは考えられないでしょう。2 能力・適性・興味・関心に応じて,その欲求を 満足させる マズローは,欲求段階説ということをいってい