福島県教育センター所報ふくしま No.55(S57/1982.2) -002/034page

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高等学校教材

「現代社会」の内容構成と教材・資料選定の視点

教材教育部 平山 伊智男


1. はじめに

学習指導要領の改訂に伴い、いよいよ、4月から「現代社会」の授業が開始される。各高等学校においては、その対応に万全を期していると思われる。当教育センターにおいても、昨年、9月に“「現代社会」の研究"を刊行して各高等学校に配付するとともに、11月16日から19日までの4日間、55名の先生方を対象に「現代社会」講座を開講し、「現代社会」の新設に対応してきた。
本稿では、指導計画を具体的に完成させるために必要な指導内容の構成、教材・資料の選定、指導方法の検討などのうち、「現代社会」の指導内容構成の基本的な考え方と教材・資料の選定について、その要点を二、三述べてみたい。

2.指導内容構成の基本的な考え方

(1)指導内容は、「社会と人問に関する基本的な問題」について考えていくための切り込みの視点を明確にして構成する。

具体的に、「現代と人間」の小項目「人口問題と資源・エネルギー」について考えてみる。このノ」・項目には、括弧書きが付されていないので、観点として「世界と日本の人口問題」と「資源・エネルギー問題」の二つを設定してみよう。そして、「資源・エネルギー問題」をどのような視点からとらえたらよいかをみれば、次のように考えることができよう。
まず、私たちの生活は石油なくしては日も夜も明けないという現状をみれば、私たちの生活と石油の結びつき、石油につかった生活の実態が一つの視点となる。また、わが国の石油の大量消費の背景には、科学技術の発達とそれに伴う経済の成長や日本人の生活に関するものの考え方もかかわつている。
わが国は、大量の石油を海外から輸入しなければならないことや石油の有限性・偏在性ということも「資源・エネルギー問題」を考える上で重要である。更に、資源・エネルギーが有限で偏在していることから、経済協力や国際関係など経済的政治的要因もかかわってくるだろうし、資源・エネルギーの節約や新しいエネルギーの開発利用という面から考えてみることも必要となる。
このように考えてみると、「資源・エネルギー問題」を指導する際の切り込みの視点として、
○私たちの生活と資源・エネルギー
○資源・エネルギーの有限性と偏在性
○資源・エネルギーをめく“る国際問題
○わが国の資源・エネルギー問題
などをあげることができよう。

(2)指導内容は、生徒中心に構成する。

「現代社会」は、ものの見方、考え方及び学び方の習得を目指す科目で、一定の知識の習得を目指すものではないといわれている。しかし、そうは言っても、学問の体系や成果から離れたり、それらを軽視したりするものでないことは当然のことである。通説的なレベルになっている諸学問の成果を、生徒が将来に向かって生きていく上で当面する諸課題と結びつけて考えきせ、判断力・思考力を身につけさせることが大切である。
ここで、もし学問の成果が、生徒のもっている興味・関心、問題意識や人生を生きていく上でどうしても掘り起こしてやらねばならない課題などに直接結びついてこなければ、生徒にとって切実を問題とはならない。この場合、指導内容は、ある学問にとって基本的事項であるということからではなく、生徒にどのような能カを身につけさせるかということから定めるべきである。すなわち、学問の体系的知識そのものを中心に指導内容を構成するのではなく、「現代社会」で学ぶそれぞれの基本的な問題について考えさせる手がかりとして学問の成果を活用するように指導内容を構成する


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