福島県教育センター所報ふくしま No.55(S57/1982.2) -004/034page

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政の景気調整、資源配分、所得分配などの機能と政策、また、国民福祉の向上の政策などに触れる指導をするわけである。
このように、「現代社会」と「政治・経済」との関係は、内容の異同で考えるべきものでないことが明確になる。それは、「現代社会」にお一いては内容を取り上げる視点を主とし、見方、考え方、学び方を主とするのに対し、「政治・経済」ではどちらかというと内容を主とするということである。これを図示すると、次のようになるであろう。

「現代社会」→「政治・経済」(選択各科目)

3.教材・資科の選定

指導内容を構成するための視点が定まれば、これについて学ぷための適切な教材・資料が必要になる。教材が定まれば、各指導内容ごとに、その角度から考えさせるのに適切な資料を選択する。前述したソクラテスの例でいえば、ソクラテスを教材として選定しただけで指導に直結することはできない。ソクラテスに関して、どのような資料を用いればよいかを検討し、適切なものを選定することが必要である。
特に「現代社会」の授業では、資料の活用が一つのキー・ポイントになると考えられる。高等学校学習指導要領解説社会編の「現代社会」指導上の配慮事項でも「指導に当たっては、様々な資料を用いることになると考えられる。生徒の感想文やレポート、記録などが活用できるし、文学作品や評論、古典、統計資料なども活用して様々な指導方法を工夫する」よう求めている。このことは、今まで以上に、資料の活用を中心とした指導の改善を求めていることを示している。
今さら言うまでもないが、資料はできるだけ生徒に切実感のあるものを選ぶことが大切である。特に「現代社会」の学習を自らの切実な問題として受けとめ、身近なものとして考えさせていくためには、生徒の実態に合った資料を選ぷことが肝要である。
例えば、抽象的、論理的思考よりも、身近で具体的な思考をとおしてこそ学習を効果的に行えるような生徒が比較的に多いときは、同じ統計を用いるときでも、与え方を工夫して、身近な問題で考えるような操作を加えることが大切である。一例をあげると、石油がどれほど我々の生活に深く結びついているかをとらえさせるために、石油の輸入量とその用途別の統計を用いようとするとき、場合によっては国民一人当たりでみれば、どの面に、どのくらいの石油を使っているかというように置きかえてみたり、身近な石油製品を一覧表にしてみたりすることも工夫の一つである。
一般的に、生徒の実態に即した資料を選定するためには、次の三つのことが目安となろう。

身近な生活とかかわりあるもの、または自 分の直接体験につないで考えることのできる もの。その内容は、具体的・写実的なもので 生徒の作文や新聞記事などが考えられる。
具体的・写実的であることを基調としなが らも、より範囲を広げ、間接経験あるいは他 者の経験をとおして考えさせることのできる もの。体験記やルポなどが考えられる。
やや抽象的、理論的に問題をとらえ、考え させるもの。論説や統計資料などが考えられる。

4.おわりに

以上、「現代社会」の内容構成と教材・資料選定の視点について述べたが、実際に指導計画を作成するのは容易でない。指導言十画を作成するためには、想像以上の時間と労力が必要である。しかし、苦しみながらも、積極的に創意工夫を生かして作成した指導計画は、生徒にとって、意義深いものとなるであろう。とにかく、生徒の実態に合った、生徒の立場に立った、教師の創意工夫を生かした指導計画の作成に努力したいものである。


引用・参考文献
○高等学校学習指導要領解説社会編、文部省
○「現代社会」の研究福島県教育センター


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