福島県教育センター所報ふくしま No.55(S57/1982.2) -009/034page
道 徳 実践を通しての「道徳年間指導計画」
経営研究部 佐藤 嘉之
はじめに
当教育センターでの道徳講座において、若い先生方から、「この講座への参加を機会にはじめて自校の年問指導計画をみた。」「年間指導計画がなくとも、副読本をみると何とか授業ができる。」等の声を聞くことがある。これは極端な発言とも思われるが、各校でも比較的これに近い実態でなかろうかと推察される。道徳の時間のもっとも、よりどころであるはずの年問指導計画への意識の低さは何によるものなのであろうか。ここでは計画立案過程における教師の参加、授業実践の過程における計画的な反省・評価のあり方に視点をあてて考えてみたい。
1.年間指導計画の活用並びに改善の実態
昭和55年度における小・中学校道徳講座(小40名、中30名)において、年間指導計画の活用並びに改善の実態について調査してみた。
表1 年間指導計画活用の実態 (イ)も含めて60%の学校が、現にある年間指導計画を活用していないと回答している。 項目 人員 % (ア) 授業の実際に活用している。 27 39 (イ) どちらかというと活用されていない。 21 30 (ウ) ほとんど活用されていない。 22 31 (エ) その他 0 0
表2 年間指導計画活用による改善の実態 項目 はい いいえ 無回答 ア. 改善のための書き込み等をし、評価の資料にしている。 9 58 3 イ. 学年打ち合わせ等で、毎週(あるいは毎月) 道徳指導の検討等に生かしている。 11 59 0 ウ. 学期または学年末等で学校や学年単位で 道徳指導に関する反省・評価が行われている。 33 34 3 年間指導計画の改善が図られているといっても、調査の結果から、おおかたの学校にわいては、実施過程における反省・評価が行われないまま、年度末になってから、あわただしく道徳主任または一部の教師によって改善されているのが玩状であろうと推察される。
2. 年間指導計画改善の具体的観点
表3 改善すべき観点 人員 % ア. 主としてねらいの明確化 26 37 イ. 主として指導過程 14 20 ウ. 主として主題の配列 3 4 エ. 主として資料の選択 25 36 オ. その他 2 3
右のアンケートは、「年間指導計画の改善は特にどのような観点から改善しようと思うか。」について調査したものである。
調査の結果から、ねらいを明確にする。資料を再検討するといったことをあげていることに注目したい。年間指導計画の改善が全体的なものであっても、部分的なものであっても、あらかじめ幾つかの具体的な観点を用意して着手することが効果的・能率的に進める上で大切なことである。改善のための、おもな観点として、下記のような内容が考えられる。
表4
- (1) 主題の配列について
- 1. 主題の配列が児童・生徒の生活経験と照らして妥当性があるか。
- 2. 重点目標との関連は図られているか。
- 3. 小学校6年間、中学校3年問を見通した主題の配列になっているか。
- (2) ねらいの明確化について
- 1. 1つのねらいの中に、多くの価値を入れ過ぎていないか。
- 2. 主題の主たるねらいが明らかになるような設定のしかたになっているか。
- (3) 資料の適・不適の吟味と入れ替え
- 1. 同じような程度の資料だけに偏っていないか。
- 2. 資料の持つ様々な性格が分析されているか。
- 3. 発達段階、生活経験から無理はないか。
- (4) 展開の大要について
- 1. 指導の中心場面が明確であるか。
- 2. 展開の方法が固定化していないか。
- 3. 資料の位置づけは適切か。
- 4. ねらいに迫る中心発問が考えられているか。
3. 年間指導計画改善の手続き
(1)実際の指導結果に基づいて問題点を整理し、実践の中で改善を進める。
年間指導計画にある同一学年の主題を指導する場合、学級の実態等によっては、そのと括り実施されるとは限らず、修正が加えられることがある。この修正されたことについて、あるいは修正とは限ら'ず、授業の反省から問題とされた指導記録を残し、この記録に基づいて学年に所属する教師間で、学期ごとに数回、あるいは隔月程度に話し合いの機会を持ち、少なくとも先にあげたねらい、