福島県教育センター所報ふくしま No.55(S57/1982.2) -012/034page
○第1回作品 (動物の国) 11月20日
第1回目に作られる作品は、ぽとんどその人の全体像や世界、また、人格が総合的に表現されることが多い。
左下隅におかれた動物たちは、ヒョウを除いて、比較的温厚な動物である。また、精神的な面を左上隅でみても、温厚な動物たちが配置されている。このことから、本人の攻撃的な気持ちは認めにくい。しかし、温厚なるが故に、白分の気持ちがわかってもらえない家族関係に不満を有し(右下隅に配置されたカバ、カメの2匹のみ)、結果として、右上隅の湖のみの出現は、社会的に空虚さを感じ、社会的不適応を起こしているものと考えることができる。
○第2回作品 (動物の国) 11月27日
左上隅の動物たちと、右下隅の動物たちが対立している。しかも、左上隅の動物たちは、花壇にかくれている。背の高いキリンによる監視、力強いゾウの出現は、本人の内的な世界に対して、静かな、しかも強力な圧力となって投影しているように思われる。これらのことが、本人の気持ちの空虚さに拍車をかけているような傾向(左下隅と右上隅の配置が少ない)がうかがわれる。
ただ、ゾウの後にいる動物は前回と同様に温厚な動物であるので、愛情欲求を求めていることもうかがわれる。
○第3回作品 (動物の国) 12月3日
中央に花をかざり、その周囲を動物がどちらかというと、右回りに取りかこんでいる。右回りの配置は、精神的に無意識から意識の世界へ進もうとする象徴であり、しかも、精神的な座としての左上隅に小山の上に立つゴリラが出現してきている。このことは精神的な強さを、それなりにもつことができるようになったあらわれであり、同時に、右下隅の沼から出ようとする両せい類のカバは、本人と接触しようとする家族の力動的な関係も象徴している。ただ、若干気がかりなのは、穴にいるカメであり、これは、まだ心を開いて本人と接触したがらない者がいることを暗示しているようにも思える。しかし、精神的な強さから、困難を自分自身で打ち破り、耐性も備わってよい方向にむくことが期待される。
4. おわりに
本事例は第3作品を作った後に登校を開始している。箱庭作品を作ることによって自分の心を見つめ、自分の問題を解決していく姿のほんの一部をかいま見ることができる。今後研究や実践をさらに深めていきたいと考えている。
- 参考文献
カルフ箱庭療法 誠信書房 箱庭療法 誠信書房