福島県教育センター所報ふくしま No.55(S57/1982.2) -015/034page

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習熟度別授業はどのようにしたらよいか倫社、世界史、地理の3科目につき、2群法により、自然学級を前提として教材の精選と構造化をはかりながら、発問を中心として生徒一人ひとりに学習参加の場を与え、意欲と学力の向上、到達度を評価する指導法の研究を行った。その結果授業に興味と緊張感が増し、下位グループの学力は向上したが中・上位グループの伸びがあまり見られなかった。

(2) 55年度の研究主題と主旨 −「誘導的発兄学習を中心とする習熟度別指導はどうあるべきか」
生徒一人ひとりに主体的に学習にとりくませ、問題解決への意欲と喜びを体験させるため、教師は教材の提供と解決への誘導的役割に従事する。そのためアンケートを実施し、予想される問題点を集約し研究をすすめた。

(3) 研究の実践 − 1.自然学級の中で2群法を用い、統制クラスと実験クラスとした。 2.上記両群の事前・事後テストによる指導の効果率等を測定した。 3.授業は発問による問題提起→仮説・ヒントの提供→考証・考察→発言・解決の手順で展開した。 4.指導計画は単元到達目標のもとに、時間ごとに目標行動を設定し、全員到達の下位目標行動と、より高度の発展目標をおいた。 5.授業展開に際して実験クラスは誘導的発問により興味関心をおこさせ、自主的に解決ができるように段階的発問を用意した。統制クラスは一般的な講義を展開した。 6.事後の意識調査、自己診断票、感想文などによりその効果を分析した。

(4) 実践の結果 − 1. 指導の効果は次の表のようになった。

  効果率 向上率 把持率
実験 統制 実験 統制 実験 統制
倫社 23.8 19.6 40.9 33.8 71.0 71.5
世界史 33.7 29.8 50.6 44.0 71.8 64.6
地理 16.0 11.3 20.9 14.2 75.0 45.0


2. 考え方の変化は次の表のようになった(倫社)。

  深くなった やや深くなった 変わらない
実験 21人 18人 7人
統制 15人 21人 10人

感想文からの分析の結果で、望ましい効果があらわれている。 3.自己診断票(世界史)では、実験クラスにおいて、予習時間が増加した。

(5) 2年間の研究の反省と今後の課題一仮説によれば、「誘導的発問によって生徒自身に問題解決への思考と検証の時間を与えれば、学習への興味・関心・意欲も生じ、学習効果も上がる」とあり、今回の実践の結果は一応の成果を収めた。しかし習熟度別学習指導が生徒一人ひとりの学習の成立にあるとすれば、誘導的発問にも多くの問題が含まれている。即ち一定時間内の発問は限られるし、発問を多くすれば時間不足にをる。とすれば習熟度別学級編成が考えられる。しかし社会科の学習に括いては思考の多様化した生徒の混在する自然学級の中での習熟度別指導法が必要になる。これについては今回の研究資料では、学級内をA(向上型)、B(停滞型)、C(不振型)に分けることができるので、グループ別指導法をとりあげた。ただし、これは教師の意識の中でのグループ化であり、座席等で固定化するものではない。
評価については、ぺ一パーテスト、形成的評価、伸長率、創意性等多種にわたり項目をつくり、多面的に評価し、生徒自身の学習意欲を向上させる動機づけとなる配慮が必要である。

○ 数学科

実践 I −自然学級において、小テストと問題演習を中心として個別化を図る指導法の研究−

(1) 指導法 対象:1年全クラス

1. 到着目標の設定
  • 到達目標 (生徒全員に習熟させたい内容)
  • 発展目標(1) (基礎の上に立つ発展的内容)
  • 発展目標(2) (やや程度の高い内容)
2. 基礎事項の復習
3. 一斉講義
中位学力者(及び下位学力者)に焦点をあて、内容は「到達目標」及び「発展目標(1)」。
4. チェックテスト・節テスト
学習意欲を高め、生徒自身の自己診断及び形成的評価をはかるため行う。
  • チェックテスト・・・到達目標に関する基本事項についてそのつど行う。
  • 節テスト・・・節の最終時に行う。
5. 個別指導
授業中においては発問・机間巡視等で図る。また放課後、ノート添削等で個別指導を図る。

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