福島県教育センター所報ふくしま No.55(S57/1982.2) -018/034page

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<アイディア紹介>

水素の性質をつきとめる教材提示のくふう

会津若松市立鶴城小学校教諭 加藤 紘一


1. はじめに

アルミニウムに塩酸を加えると水素の気体が発生する。これまで、この気体が水素であることを、火を近づけるとはげしく燃えることや、空気より軽い気体であることからとらえさせようとしてきた。しかし、はげしく燃えることには気づかせることができたが、空気などと比較して軽い気体であることまで見つけさせるにはむずかしさがあった。そこで、次のような教材を開発し、提示のし方を工夫して指導した。

2. 指導の実際

(1) 教具の製作
水素の性質をつきとめる教材

(2) 操作の仕方
1. アルミニウム片をフラスコに入れ、塩酸を加える。
2. 片手にシリカゲルをつめたパイプを持ち、もう一方の手に火をつけたろうそくを持つ。
3. 息を吹きかけてシャボン玉をとばし、浮き上がったら、すばやく火を近づける。

(3) 子どもの活動のようす
1. シャボン玉がふくらむことにより、気体の発生をとらえる。
2. シャボン玉がフワフワ浮きあがることから空気より軽い気体であることをとらえる。
3. シャボン玉に火を近づけると、ボッと空中で炎が広がることから、燃える気体であることをとらえる。

(4) この装置の効果
1. 気体(水素)発生を視覚に訴えてとらえさせることができる。
2. 水素のシャボン玉が、空気や二酸化炭素のシャボン玉とくらべて重さのちがいをはっきりととらえさせることができる。
3. 献実験が安全であり、水素燃える気体であることをとらえさせることができる。
4. 発生した水素を直接シャボン液につけてシャボン玉をとばそうとしてもうまくいかないが、途中で、シリカゲルの中を通すとたいへんよくふくらむ。直接シャボン液につけた場合、シャボン玉がすぐこわれてふくらまない。これは、塩化水素(酸性)が水素といっしょに発生し、シャボン液にふれ、中和反応が起こりシャボン玉がこわれてしまうからである。

3. 指導上の留意点

(1) この提示は、アルミニウムに塩酸を加えて発生した気体の性質を子どもたちが考え出した方法でつきとめた段階でおこな)と効果的である。

(2) 口が狭く、閉じた容器の中で水素発生をさせるために・予備実験により安全性を確かめておく必要がある。また、子どもには実験させないようにする。

(3) 濃度の高い塩酸を使用することにより、急激な反応が起こるために、時間短縮はできるが、シャボン玉づくりは、空気が抜けるぷんを見はからってすばやくやること一が大切である。

(4) シャボン玉がとぷまえに火を近づけないようにする。炎が吸引されても、シリカゲルパイプの中までは入らないため、安全ではあるが、危険防止のためにさけるべきである。

(5) シャボン玉がふくらんだら息を吹きかけるととぷがそのままにしておくとなかなかとばない。

(6) ろうそくをつけた竹ひごは、長い方が便利である。

補足 −この実験を安全に行うために

実験を安全に行うために、さらに、次のことを留意すること。
(1) 爆発の危険性があるので、水素を発生させている ゴム管の先端には絶対に火を近づけないようにする。

水素の性質をつきとめる教材(補足)

(2) シリカゲルを十分つめる。
太さ2cm、長さ20cmのプラスチックパイプの中にシリカゲルを十分につめ、プラスチックパイプ内にすき間の内容にしてから、細いガラス管のついたゴム栓をする。

(3) アルミニウムと塩酸が反応すると、多量の熱が発生するので、三角フラスコを水で冷却させながら反応させる。それでも反応が激しすぎる場合には6N塩酸を2倍にうすめるか、または、反応させる塩酸の量を2分の1にして、300ccの三角フラスコを用いて実験する。

(4) 三角フラスコ内の空気が完全に水素で置換されているかどうかを確認してから実験を行う。

確認のしかた
ゴム管の先端から発生した水素を、水上で水を満たした試験管に捕集し、”ポン” という燃焼音がしないことを確かめる。


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