福島県教育センター所報ふくしま No.56(S57/1982.6) -014/042page

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教育相談


心を病むからだ一過敏性大腸症候一

教育相談部  畦 原  弥

1. はじめに

 学校不適応で来所する中・高校生の,特に女子に身体症状を訴えるものが多く見られ,その症状の多くが思春期心身症的な特徴を強く見せている。その中でも,特に多いのが消化器系の症状を主とする不定愁訴症状であり,ほとんどが医者に診てもらった経験を持ち,しかも症状の改善がおもわしくないという。

 福岡市のある病院(日本ではじめて思春期内科を設立した)でまとめた学校不適応の疾病分類から上 位5つを上げると,
    1位 過敏性大腸症候群   28%
    2位 自律神経失調症    19%
    3位 緊張性頭痛       12%
    4位 過呼吸症候群      9%
    5位 神経性食思不振症   6%
となり,消化器系の心身症の代表的なものである過敏性大腸症候群が第1位である。

 2. 過敏性大腸症候群

 わが国では,現在,過敏性大腸症候群(isritable colon syndrom)という診断名でいわれているが,症状が大腸にだけあるのではないということから,欧米では,過敏性腸管症候群(irritab1e bowel syndrom)といわれているようである。

 いずれにしても,主として大腸の機能異常の病態をさすのであり,待に機能亢進の病態を指すというのが定説のようである。

 過敏性大腸症候群は,便通異常(下痢,便秘,下痢と便秘の交替)腹痛などの腹部不定愁訴があり,器質的原因がないにもかかわらず,大腸の過敏性に基づくと考えられる症状のために,病的であると気にしたり,悩んだりしている状態である。そのために,いわゆる胃腸神経症であるという学者もいる。

 身体症状としては,便通異常が強く出,その面から,(1)下痢型(aiarrhea type),(2)便秘型(constipaion type),(3)下痢便秘交替型(unstablb1e type),の3タイプにする場合が多いが,それに次の2つ,(4)ガス型(gas type),(5)分秘型(secretry type)を加えることもある。

 その他に,腹痛をはじめとする腹部不定愁訴や,動悸,頭重,不眠,片頭痛,食欲不振,嘔吐(いずれも神経性)筋痛症などを訴えていることが多い。

 精神症状や心理反応と考えられるものも多く,落ちつかない,いらいらする,ゆううつ等を自覚しており,それを次の様に分けている場合が多い。

 (1)不安緊張型,(2)抑うつ型,(3)転換反応型(4)心気症型以上の4型であるが,腹痛や下痢のために学校に行けないというものの大部分が転換反応型と考えてよい。

 診断に当たっては,専門家にまかせるべきものであるが,特徴的な点を記すると

 (1)便やガスがでると腹痛が楽になる

 (2)便秘が続くとウサギやヤギの糞の様な便がポロポロでる

 (3)下痢は,水様になるのではなく,ひも状の軟便が,1日数回,特に登校直前などの緊張したときに出る

 (4)必ずといってよいほど,不安,あせり,心気状態,うつ状態などの神経症症状があり,それが身体症状と併行して消長している

 以上からもおよそ見当がつくのではあるまいか。

 従って,診断の確定のためには,医学的諸検査に加えて,心理検査の必要があり,一般には,性格検査(Y-Gなど),CMI(Cornel lMedical Index),不安検査などが行われている。

 次に治療は,

(1)薬物療法:対症療法であり,根治できる薬物はなく,あまり多くは期待できない。

 (2)生活行動を修正する:
(a)食習慣の修正(内容,時間など)
(b)排出習慣の修正
(C)生活時間の修正

 (3)心理療法
(a)自律訓練法・行動療法など

 (4)絶食療法:これは専門家の指導によるもので


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