福島県教育センター所報ふくしま No.56(S57/1982.6) -024/042page
アイディア紹介OHPで演示可能なインボリュート歯形創成作図器
福島県立福島工業高等学校 杉 生 良 明
1. はじめに
OHPはかなり普及し,教材提示法もいろいろと工夫され利用されているが,実験演示とか,動きのあるパターンの教具が未開発である。ここでは,透明アクリル板を利用したOHPで演示可能なインボリュート歯形創成作図器について,紹介し参考に供したい。
2. 構造と使用法
歯車は,ホブという刃物を用いてホブ盤で切削されるが,これは創成法によるものである。歯車素材とラックエ具(ホプ)とが,歯車素材のピッチ円とラックエ具のピッチ線で接しながら運動するような関係を与えると,ラック歯面の直線の包絡線としてインボリュート歯形が創成される。図1に本器の構造を示す。
図1 歯形創成作図器の構造
厚さ3oの透明アクリル板を,0HPのステージガラスの大きさ(280×280o)に切り,これを基板にし,その上にラック型板(モジュール15,圧力角20℃)をビス止めする。一方歯車の歯数30枚,ピッチ円径450oと,歯数12枚,ピッチ円径180oの2枚のピッチ円板の一部分をアクリル板で作る。歯形を創成するには,ピッチ円板上にクリアシートをセロテープではりつける。図2のように,ピッチ円板をラックのピッチ線上をすべらないようにころがす。
このとき,ラック型板の歯形に沿ってサインペンまたはコンパスの針で,クリアシートに歯形をかけば, 図3(a)のようなインボリュート歯形が創成される。
これによりホブによる平歯車の歯切法の原理を0HP上で演示説明することができる。歯車の歯数が少なくなると,図3(b)のようにアンダーカットを生じ,歯元が切り取られ歯が弱くなる。このアンダーカットを防ぐために,工具の基準ピッチ線をず らして歯切りをする。このような歯切りを転位歯切法といい,歯車を転位歯車という。図1の破線のように転位量に相当する当板を取付けて歯形をえがけば,図3(c)のような転位歯形が得られる。アンダーカットを生じないが,歯元がとがるのがわかる。
3. 指導の効果
静止画を想像していたのでは,実際の動きを理解することが困難であるが,ステージ上のラック型板とビッチ円板と同じものを別に作り,これを生徒にまわし自分で実際に作図させてみると,大変興味を持ち,創成法,・アンダーカット,転位歯卓などの理解がよく,知識の定着化につながった。