福島県教育センター所報ふくしま No.56(S57/1982.6) -025/042page
アイディア紹介身近な自然を生かした理科指導の」一例
一子どもたちと分校周辺の草花を求めて一矢祭町立東舘小学校追分分校教諭 佐 藤 洋 一
1. はじめに
自然に興味関心を持って接する子どもたちにしたい。自然に接する楽しさを味わわせてやりたい。これは私たち教師の願いである。
私の勤務する追分分校は阿武隈山系の南端にあり,自然にはたいへん恵まれた環境にある。子どもたちはこの恵まれた自然の中で育って来てはいるものの,あまりに身近すぎてわりあい自然に対する関心がうすい。そこで,昨年より地域の特性を何とか授業の中で生かし,子どもたちを少しでも高めたいと思い,野外へつれて行っては草花を調ぺるなど自然にふれる機会を作って来た。本年は,これをもう少し系統だててまとまった形で授業に生かしてみようと考え,いくつかの試みをしている。
2. 自然にふれる活活動の設定
子どもたちに自然に親しませ自然を調ぺる力を養うためには,自然にふれる場面を設定してやらねばならない。野外観察はこの方法の一つであり,ねらいとすることは,見たり・探したり・育てたり・使ったりする活動を通して生物に親しみ,自然に接する楽しさを味わわせることであり,また,生物の著しい特徴に気づかせることである。このことから私は,草花に焦点をあて,
(1)草花をさがす (2)草花を育てる (3)花ごよみと花地図を作る
の3つの活動を,授業およぴ放課後等の活動として取り上げ,実践をしている。3. 各活動の内容
(1)草花をさがす活動
子どもたちとともに,咲いている草花を求めて野外へ出る。ここでは,草花をさがしながら自然に親しむと同時に,花の色・大きさ・形などの大まかな特徴に気づかせる。
子どもたちの草花をさがす目はするどく,あちこちで「先生。見つけたよ。」の声が上がる。子どもたちは草花の名前を知りたがる。知っているものはその場ですぐに教えられるが,そうでないことの方が多い。このような場合,私は,いつも子どもたちといっしょに調ぺることにしているが,子どもたちには検索の方法はむずかしいので,「葉はどうついているか。」「花びらの数は。」と,一つ一つ子どもたちに観察させながら私が検索する。また,最近は,あらかじめ事前に目にとまった草花をしらぺておいて,絵力一ドにしておくことが多い。さがした草花は,観察材料として生かしている。
(2)草花を育てる活動
ここでは,採集してきた草花の観察・栽培を通して,なおいっそう自然に親しむことをねらいとしている。
子どもたちは,自分の採集して来た草花だという意識から,毎目よく世話をしている。また,めずらしい草花・きれいな花の咲いている草花や,まだ花の咲かない草花の時は,なおさら楽しみを持って大切に育てている。
(3)花ごよみと花地図づ<り
まとめの活動として,野外で見つけた草花を花の咲く順にみんなで記録する。低学年なので文章記述ではなく,それぞれの花の咲く時期(上旬・中旬・下旬)ごとにシールをはっていく方式とした。こうすると,いつどんな花が咲くか一目でわかる地域の花ごよみができる。
また,あらかじめ印刷しておいた地図に,花を見つけた場所をシールで順次記録させていくと,かなりく<わしい花の分布図ができ上がる。花ごよみと両方合わせると,いつ・どこに・どんな花が咲くかわかる資料ができ上がる。
これらの活動を行っているうちに,子どもたちは,花の咲<時期や場所に違いがあることに気づきはじめ,さらに興味がわき,関心が高まってきているようである。
4. おわりに
以上の活動を授業等に取り入れてきた結果,子どもたちに毎日草花の世話をする姿が見られるようになったほか,草花についての情報を提供してくれるようになるなど,身近な自然に対して興味関心が高まってきている。年間を通して一つの成果として実らせたいと思い,指導を続けている次第である。