福島県教育センター所報ふくしま No.57(S57/1982.8) -002/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

小中学校教材

植物教材の準備と利用

科学技術教育部  宮内 三良

1 はじめに

 理科学習の本命はやはり観察,実験にあると思う。
小学校理科A領域や中学校理科第2分野の生物関係についてみると,授業の進度に合わせての材料の準備,観察・実験の適期の設定,時間的な制約など問題が多く,苦労するところである。教材として使用するには,たやすく入手でき,あまり高価でなく誰にでも扱えて,その結果がすぐにたしかめられるものが欲しい。教科書などに出てくる材料は,特定のもの以外は,特に指定されているわけではない。各々の地域にあったものをえらび,準備しておきたいものである。あまり手数のかからない教材生物として,学校園などで,栽培しておきたい植物とその利用のしかたについてあげてみた。

2 ムラサキツユクサ

 古くから,教材として細胞分裂や原形質流動などの観察材料として用いられてきた。栽培も簡単で,一度植えておくと,毎年ふえつづけて大きな株になる。2〜3年ぐらいごとに株分けしておくとよい。学校園などにも,是非植えておきたい植物である。

   裏面の表皮は,爪などでもたやすく剥がれるし,またピンセットなどで剥皮した切片を水で装置して観察する。酢酸カーミン,酢酸オルセインなどで,核を染色してやれば,表皮細胞,気孔の構造などと共にきれいなプレパラートができる。アルコール,キシレンなどを用いて脱水し,バルサムで封入しておくと,永久プレパラートとしても使用できる。
図 1 ムラサキツユクサ孔辺細胞と気孔 図 2 ムラサキツユクサの葉の表皮
図 1 ムラサキツユクサ孔辺細胞と気孔 図 2 ムラサキツユクサの葉の表皮

   おしべの花糸の毛を用いれば,原形質流動がよく観察できる。ミクロメーターを用いれば,大きさや,速度なども測定できる。
 つぼみの2〜3mmぐらいのものを用い,おしべの葯(やく)をスライドガラス上で押しつぶす。酢酸オルセイン,酢酸カーミンなどの染色液をかけ,しばらくおき,カバーガラスをかけて検鏡する。花粉形成までの.減数分裂の過程を見ることができる。
図 3 ムラサキツユクサ 図 4 減数分裂
図 3 ムラサキツユクサ 図 4 減数分裂

   あまり利用されないが,体細胞分裂の観察材料に適したものである。タマネギの発根材料もよく用いられるが,同じ方法でやってみると,タマネギよりもムラサキツユクサの細胞の方が大きくて,みやすく,よい材料である。
 ムラサキツユクサの株を掘りおこし,株分けする。水を入れた容器(牛乳びんなど)にさしておく。毎日,水をとりかえておくと,4〜5日で白い新しい根が伸びてくる。市販のタマネギには,発根を防ぐ阻害剤で処理したものがあり,発根しないものがあるが,ムラサキツユクサでは,ほとんど発根する。発根材料の根端を2〜3mm切りとり,45%のプロピオン酸10mlに入れ,直接加熱してやる(約4〜5秒)液がふっとうすれば中止する。やわらかくなった根端をスライドガラス上にとり,もう1枚のスライドガラスを十字型にのせ,そのまま静かに上から押しつぶす。両方のスライドガラスに材料がつくが,多い方のスライドガラスの材料を使い,これに染色液(プロピオン酸オルセイン,酢酸オルセイン)を1滴落とす。2〜3分ぐらい染色したものに,カバー


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。