福島県教育センター所報ふくしま No.57(S57/1982.8) -003/038page
ガラスをかけて検鏡する。最初は低倍率で分裂細胞をさがし,さらに高倍率で見ると,分裂時の各段階毎の染色体像が,はっきりと観察される。
この方法だと,固定,解離が一度に行われて,従来のカルノア液による固定や,塩酸による解離,温度の保持,押しつぶしによるムラなどがなく,誰にでもできるし,失敗が非常に少ないようである。
うまくできたプレパラートは,パラフィンかワラツプなどで封じておくと,短い期間であれば,授業時などに生徒に利用させるとよい。
図 5 体細胞分裂3 インパチエンス(アフリカホウセンカ)
植物材料は,戸棚の中からとり出した薬品で実験するようなわけにはいかない。季節によっていろいろと制約があり,決まった時期にだけしか利用できないことが多い。観察や実験を行う時に,必要な教材を,目的にかなった状態で十分に用意できたら,ねらいの大半は果たせたといってよいぐらいである。そのためには,早くから種子・球根を準備し,土を作り肥料を与え,更には水やり,除草など,栽培・管理に目が行き届かなくてはならない,となると年間を通じて栽培でき,多目的に教材として利用できるようなものが求められてくる。
南アフリカ原産で,最近園芸店などでは,インパチエンスという名で出まわり,観賞用草花として,一般の家庭などでも栽培されている植物がある。
(和名 アフリカホウセンカ)
図 6 インパチエンス
小学校の植物教材として,ホウセンカがあげられているが,開花期が夏休みと重なって,うまく利用されていないこともある。インパチエンスは,冬期でも10℃ぐらいに保てれば,つぼみをつけ開花し,ほとんど1年中花を見ることができる。最近では,学校で暖房があり,冬は南側のガラス越しの窓際にでもおき,夜間は,ビニールその他でカバーしておけば,枯れずに冬越しする。ただ霜にあてれば,すぐに枯れてしまう。
鉢植えのものや種子など,園芸店で入手できる。栽培,繁殖もそう難しくない。種子まきでもよく発芽するし,伸びた枝をさして簡単にふやせる。気温の高い時期は,花壇,プランターなどに栽培し,冬は鉢植えで室内にとりこむ。直射日光はあまり好まないので,半日陰などがよく,西日のあたらないようなところが理想的である。病害虫も少なく,肥料も化成肥料を施す程度でよく育つ。花色も多く,多花性で,利用価値が高い植物である。ただこのなかまには,花は咲くが,おしべが不完全で種子ができないものがあるので,求める時,果実ができ種子をつけている品種をたしかめて購入するとよい。葉 裏面の表皮は,表とちがって剥がれやすい。気孔をはじめ,表皮細胞の観察によい。スンプ液による観察なども,小学校などでは簡単にできる。葉からの蒸散作用の確認には,ポリ袋で,葉をつけたものと,葉を全部とったもので比較させたり,「蒸散ばかり」でもたしかめられる。塩化コバルト紙を,表と裏にセロテープではりつけ,色の変化で調べることもできる。
葉での光合成を調べることもできる。ジャガイモの葉を用いてのヨウ素でんぷん反応を調べる時,ジャガイモの葉がない場合など,このインパチエンスが大いに役立つ。鉢植えのものだと移動も簡単である。遮光したものとの比較など,すぐに役立つ。またアルコール処理をしないで,ゆでておひたしにした葉を,ろ紙にはさみ,さらしなどの上からたたく。ろ紙をヨウ素液につけ,青紫色のでんぷん反応をみる方法だと,安全に確実に結果が得られる。茎 食紅で色をつけた水,赤インク,うすいサフラニン液などに,インパチエンスを根ごとさしておく。30分ぐらいで色素が上昇して葉脈まで染まるの