福島県教育センター所報ふくしま No.57(S57/1982.8) -005/038page

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小学校教材

小学校の地域学習の進め方
 − 野外観察と地図利用を中心に −

教科教育部  吉田 伊勢吉

1 はじめに

 小学校における社会科学習を能力育成の面からみると,低学年では観察による直接経験が重視され,高学年では資料による間接経験の比重が高まる。これに対し,中学年は具体的な観察学習から抽象的な資料学習へ移行する中間にあって,ここでは,具体的な社会事象を直接観察することと,地図や統計資料などで間接的に社会事象を認識することが同時に行えるのである。
 下の統計は,昭和56年度の小学校社会講座に参加された60人の,「社会科指導上の問題点」に関するアンケートを,目標・内容・方法などの視点から分類・整理したものである。これをみると,項目(エ),(キ)などの資料活用に関するものと,項目(オ),(ウ)などの学習活動に関する,いわば,指導方法に関する問題点をあげたものが172人に達する。これに,項目(カ)を加味して考えると,いわゆる地域学習に関する問題点が大きな比重を占めていることがわかる。中学年で行う地域学習は,小学校社会科教育の進め方として一応の定着をみているものの,実際の指導面では,この続計が示すように方法上の難しさを訴えている。講座では,地域学習の改善・充実を目指し,演習「地域観察」を取り入れているので,この内容にもふれながら,中学年の地域学習の進め方を野外観察と地図利用を中心に述べてみたい。

    社会科教育実践上の課題(小学校)
社会科教育実践上の課題(小学校)

2 地域素材の教材化の視点

 地域素材を探し出す目,教材化の視点を考えるとき,何といっても大切なことは,何のために地域素材を教材化するかという“ねらい”を明確にしておくことである。社会科では,特に目標・内容・方法は密接に結びついている。それらを関連づけて統一的に把握することは極めて大切なことである。その際の大前提となるものは,何といっても目標に関することである。具体的な指導目標が明確になって始めて,何をどう学びとらせるのかという内容や方法が確定されることになるからである。
 前に示した続計で,目標・内容に関する問題点を挙げているのは20人で,極めて少ない。何のために何を教えるかという目標や内容に関する追求は,教材研究の基本であるが,とかく,方法だけを問題としがちなこの傾向は,一面で評価活動をあいまいにしており,社会科教育推進上の一つの課題であろう。
 ところで,社会科で取り上げる地域素材とは,子どもが生活している地域社会における学習の対象となる具体的な社会的事象と考える。地域素材であれば,どんな内容でも教材になるのではなく,あくまでも学年の目標や内容と子どもの興味・関心に即しながら,次の視点で教材化する必要があろう。
(1) 子どもたちの学習が,多面的に行われ,しかも学年の目標達成につながる教育的価値のあるもの。
(2) 子どもの日常生活と関連が深く,地域社会の願いや課題につながるもの。
(3) 子どもたちが具体的に観察・調査できるとともに,資料収集ができやすい内容のもの。
(4) 子どもたちの興味・関心が深く,自分たちの生き方とかかわるもの。
(5) 子どもたちが主体的に学習ができ,継続的に発展できるもの。
 次の図表は,講座での演習のときの観察ルート及び教材化の参考事例として項目のみを示したものである。観察の主題は「町の様子を観察しよう」とし,調査・表現活動も取り入れ,その事例は学年段階の


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