福島県教育センター所報ふくしま No.57(S57/1982.8) -007/038page

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・ 記録の「ところ」.「出所」.「記録者」を確認したり,事実と解釈を区別したりして,記録の整理,分類の方法を子どもとともに工夫する。
・ 解釈やまとめの作業を単に,抽象的なことばのやりとりを中心にした話し合いで進めるだけではなく,評価の観点に即して地図,カード,表,文章に記録するなど,具体的な作業を通して考えを深めさせるようにする。

4 地域学習と地図の利用

 地図は,地球表面の全部または一部の状態を,記号や文字を用い,かつ縮小して平面上に描き表わしたものである。地域学習において,「野外は第一の教室であり,地図は第二の教室である。」といわれるように,地図の利用は,地域学習の指導に欠かすことのできないものである。
 第3学年は絵地図から平面地図への移行期で,この学年から本格的な地図指導が始まる。従って,この時期の地図指導を能力育成と関連づけてまとめると次のようになる。
   描図能力
    ・ 学校から自宅までを,絵地図よりさらに詳しくかこうとして,平面地図に表現することができる。
    ・ 今まで絵で表わしていた高い所を,斜線や色で平地と区別することができる。
   読図能力
    ・ 何がどこに多く,どこに少ないかなどの分布密度がわかる。
   方  位
    ・ 八方位を使いはじめる。
   地図記号
    ・ 鉄道と駅,道路と町,橋と川,田と畑,神社と寺,市役所,警察署,山など記号化ができる。
   等高線
    ・ 等高線による土地の傾斜の読みとりができはじまる。
 第3学年の第1単元「わたしたちの町の様子」の小単元「学校の周りの様子」では,学校の屋上などから観察したことを白地図に書き入れる作業を行う。この際,空中写真を併用し,観察した建物,道路,橋,山などが空中写真のどこにあるかを確認させるステップを一つ加えると,絵地図から平面地図に移行させるのに有効な働きをする。
観察カード
 また,屋上などから観察する場合,右上図のような観察カードを作成し,方位ごとに部分的に観察させ,部分的に記入させると効果的である。またこうしたカードを一人に4枚ずつ配布して記録させ,それを並べ合わせると.360度のパノラマ式の絵地図が完成するわけである。
 なお子どもは自分の眼の高さで事物を見て,自分の地域像を育てる傾向がある。教師と子どもの眼の高さの違いは,わずか20〜30cm程度であるが,その高さの違いが予想外に大きな視野の違いになり,それがまた関心事の違いにもなるので,指導の際に留意する必要がある。
 次に地図指導上の留意点を二つあげる。
(1) 単なる地図学習に終始させるのではなく,地域の具体的観察とその解釈とを並行させるように配慮して指導を展開する。
(2) 子どもが受身の立場におかれる指導形態を変更し,できるだけ多くの作業学習を取り入れ,子どもの自発的・主体的学習を喚起する。
 地図指導において目標としているものは,地図の判読や作成などによる地図の理解に止まるだけでなく,むしろ,地図の理解を通しての,観察力,表現力,思考力を育成することにある。つまり,子どもの能力一般の育成を目指している点に留意したい。

5 おわりに

 地域学習の進め方を,野外観察や地図利用と関連させて述べてみた。野外観察は時間がかかり過ぎる,適当な見学場所がない,危険である,などの理由から敬遠され,その代りに,スライド,VTR等の間接経験にたよりがちである。しかし,社会科本来のねらいは,地域社会に生起するさまざまな事象から,子どもが課題をつかみ,それを直接観察し,そこから社会的意味を探ることにある。1980年代は地方の時代といわれ,身近な地域社会をいろいろな角度から見直す風潮も出てきている。地域学習の中にねらいに即して見学や観察活動を取り入れることが,子どもの観察力,表現力,思考力等の能力育成のうえからも極めて大切なことである。

    参考文献
  1. 新社会科指導法事典 昭和54年(明治図書)
  2. 地域学習の新構想  昭和56年(明治図書)
  3. 観察・表現の指導  昭和57年(文部省)


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