福島県教育センター所報ふくしま No.57(S57/1982.8) -012/038page

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教育工学

わかる授業にせまる教育機器の活用
(その 2)− OHP教材自作の基礎知識 −

経営研究部  田母神 淳

1 授業改善と教育工学

 教育工学講座の研修にきたある若い先生から「教育工学の講座になぜ授業の設計や授業の改善などの講義があるのか」という質問を受けたことがある。その先生は,OHP や VTR などのハ一ドウェアである教育機器を使うことだけが教育工学であると考えていたようである。ハードウェアの利用もたしかにその一方法ではあるが,それに関連した教材としてのソフトウェアがなければハードウェアはその機能を発揮できない。ソフトウェアを作るのにはそれなりの授業研究が必要である。すなわち教師が自ら授業を計画し,目標を定め,教材研究を深める中から学習者の実態に合うように考えた自作のソフトウェアが,多くの授業で効果をあげていることを忘れてはならない。教育工学には,このように授業の設計からはじまり,目標を明確にし,十分な教材研究をしてから必要なハードウエアを選定し,それにかかわるソフトウェアを作成して,いかに効率的にわかる授業をすすめていくかを研究するなど,いわば「授業の改善」のための一手法が含まれているということができる。

2 OHP の特性と効果を高める要件

 教育機器を授業のいろいろな場面で使って効果をあげようとする場合,大切なことは,授業で設定した目標に学習者を到達させるのに,どんな方法が一番いいか,そのためにはこんな機器がほしいというようにその前提として教師自身が機器利用の必要感を持つことである。機器はあるから使うのではなくて,必要だから使うのだという考えに立たなければ機器を生かした授業改善には結びつかない。したがって,いくら機器があっても,その機器に対する知識がなければ,その必要感も起こらないわけだからまず,各機器の機能や特性をよく理解し,そのうえで必要なソフトウェアの作成にあたることが大切である。ここでは OHP についてその特性の主なものをあげてみると,

(1) OHP は,視覚にうったえながら学習が進められるので,学習者の知的興味をひき,学習事項を定着させるのに役立つ。
(2) OHP は,情報提示機器としての機能だけでなく,学習者の思考手順や作業結果の発表などにも使用することができる。
(3) TPシートの自作が容易で,学習者の思考手順に合った教材がくふうでき,しかも学習者の反応1に即した教材提示のコントロールができる。
(4) TPシートは保存ができ,何回でも必要に応じて使用できる。
(5) 学習者も OHP を使って学習に参加する機会が多くもてる。

などが考えられる。しかし実際の利用となると,すべての機能がプラスの方向にだけ拡大するとは限らない。利用のしかたによってはマイナスの方向に機能を拡大することもあり得るので,次のようなことに留意する必要がある。

(1) 教材を提示する場合,その提示方法として OHPの使用が最適なものであるかどうか。
(2) TP の内容は指導のねらいに即しているか。
(3) 指導過程への位置づけは適切か。
(4) TP の構成は学習者が活動しやすいように配慮されているか。
(5) 文字の大きさはどうか,また色彩効果はどうか。
(6) 提示過多,情報過多になっていないか。また情報の程度や量は学習者の実態に即しているか。
(7) 発問内容,程度について十分に考慮したり,提示方法をくふうするなど,教師のはたらきかけにも十分なくふうがなされているか。
(8) 投映のための条件整備は十分か。

3 資料収集は身近なものから

 実際に TP を自作するには,事前に十分積み重ねた教材研究のあと,必要な資料を収集し,あれこれとくふうして製作にあたるのだが,ここで大切なのは,ひとりよがりの TP を作らないことである。学習者に「何を,どのように学習させるか。」という意図を明確にしておくと同時に,授業でスクリーン


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