福島県教育センター所報ふくしま No.57(S57/1982.8) -022/038page

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ことにする。

3 校内研修におけるコミュニケーション

(1) 校内研修とコミュニケーション
 校内研修は「同じ学校に勤務する教員が,校内に作られている各種の組織を通して相互に自己啓発を行い,教師として資質を高めようとする研修である」(註 6)といわれている。また,コミュニケーションは「ある個人または集団が,他の個人または集団に対して,情報,感情,思想,意見などを伝達し,それが受けとられる全過程である」(註 7)と定義づけられている。
 どちらも,個と集団との相互関係において成立する活動であるが,校内研修におけるコミュニケーションの意義は,集団における組織を通して意思の交流を図りながら,相互に自己啓発を行う活動の全過程それ自体であるといえよう。
 校内研修のねらいは,教師の資質の向上にあるが,そこに至る過程においては,集団の組織を通して培われる集団意識に支えられた人間関係の充実とモラールの高揚によって,はじめて実現するものである。 したがって,そのねらいを達成するためには,研修過程での動的な研修活動の実際と,そこに働くコミュニケーションの割役を重視する必要がある。

(2) 研修活動におけるコミュニケーション
 研修過程での動的な研修活動の実際について考察するわけであるが,限られた紙面でそのすべてに触れることは難しい。そこで,コミュニケーションともっともかかわりのある研修組織を中心に,その組織づくりと運営過程に焦点をしぼり,コミュニケーションの視点から考察し,改善のための方策を明らかにしていきたい。

  1. 単位組織の活用
     校内研修で共通理解や意思の伝達を図るため討議や話し合いの場として用いられる組織は,職員会議研究協議会などの全職員をメンバーにした全体会か,学年会,教科部会,研修のための各係などが一般的である。
     図 4の調査によれば,全体会はほとんどの学校で実施しているが,学年会や部会の実施状況はやや低い傾向にある。このことは,学年会・部会などの単位組織での研修活動が十分でないことを示しているといえよう。

        図 4 校内研修の組織とコミュニケーション
        昭 57「学校経営・教育研究法」講座の研修生
    図 4 校内研修の組織とコミュニケーション
        小・中・高等学校教員 100名  ※ 自由選択

     共通理解を図るためには,全職員で組織された全体会が効果的であることはいうまでもないが,必ずしも,意思の交流が十分行われているといえない面がある。時間や実施回数に限度があることと,コミュニケーションの流れも制約され,上から下への一方通行になりやすく,形式的な共通理解でおわることも考えられる。コミュニケーションの流れには,ア、上から下への流れ,イ、下から上への流れ,ウ、水平な横への流れの三つがあるといわれているが(註 8)意思の伝達にとどまらず,意思の交流を図るためには,特にイ・ウの流れを重視する必要がある。
     全体会のような大きい組織での隘路を補うには,単位組織を活用することが大切になってくる。コミュニケーションのネットワークは,フォーマルなものインフォーマルなものが入り混じって,複雑な様相を示しているので,そのすべてを図示するのは難しいが,そのうちフォーマルな組織における代表的なネットワークを示すと図 5のように

        図 5 コミュニケーション・ネットワーク
    図 5 コミュニケーション・ネットワーク

    なるであろう。この中で,第4ネットワークは,イ・ウの流れも可能になり意思の交流が図りやすくなるであろう。これは,単にコミュニケーションの流れだけのことではなく,発言しやすい場,個の特性の承認,役割意識等,モラール高揚の要


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