福島県教育センター所報ふくしま No.57(S57/1982.8) -023/038page

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    素ともかかわりができて,研修活動に及ぼす影響も大きいものがあると考えられる。したがって,校内研修組織の中に,単位組織をどのように位置づけ,どのように活用するかは,校内研修活動の運営過程における重要なポイントであろう。
  1. 組織間の連絡・調整
     ここまで,単位組織としての学年会,教科部会,研修のための各係などの活用について述べてきたが,それだけで研修活動が理想通りに展開されるとは限らない。それは,主に大規模校の場合になるが,全体の組織が大きくなればなるほど,組織と組織との意志の疎通が図りにくくなり,単位組織がひとり歩きをする傾向が強くなる。研修のための学年会や各係は,それぞれよく活動しているが,学校全体としてはまとまりがなく,研修の効果も期待に反する結果となる場合がある。この単位組織間を結び,連絡・調整の役割を果たすのが,研究推進委員会や研修係である。
     単位組織の情報を集約するとともに,その情報を各単位組織に伝達し,組織間を連絡し,調整する組織である。これは,組織を編成するということより,運営上の問題なのかもしれないが,少なくとも,研修活動の組織づくりをすすめる際には研修計画とあわせて,コミュニケーションのルートを明らかにしておく必要があるといえよう。
     バーナードは「共通の目的を達成するために進んで貢献しようとして,相互の意思を伝達する人々がいる場合に組織が生ずる」(註 9)と述べている。組織の体系にとって,意思の伝達は主要な位置を占めるものばかりでなく,伝達の通路は,組織の形態を規定し,組織を動的にする過程であると考えることもできるであろう。
     図 6のようなコミュニケーションの流れまで配慮した校内研修活動のための組織づくりに努め,単位組織間の連絡・調整を図ることが大切であろう。

        図 6 研究組織間のコミュニケーションモデル(註 10)
    図 6 研究組織間のコミュニケーションモデル(註 10)
        ※ ノイズとは非公式な個人の「発言」「考え」「つぶやき」等をさしている。

  2. 運営過程での工夫
     コミュニケーションの方法は,口答・文書・会議・会報など多様であるが,校内研修活動で用いられる方法は,会議によるコミュニケーションが一般的であろう。
     研究協議会,分科会,授業研究会等,組織や形態は異なるが,多人数のものが情報をもちより,検討しあって意思決定を容易にするため,会議や会合が多く用いられる。しかし,限られた時間や日程の中では,十分な成果をあげられない場合もある。
     こんなとき,会議だけのコミュニケーションのみにたよらず,他の方法を活用することも大切である。例えば,研修だよりの発行や研修用掲示板の設置など,話し言葉だけでなく,書き言葉としての文章や文書によるコミュニケーションの方法を工夫することも考えられる。
     また,全体会や分科会などの会議や会合においても,話し合いや討議だけに終始せず,作業を取り入れることも考えられる。例えば,ワークショップやKJ法の活用である。小グループごとに作業したり,文章化した結果を全体会に提案する方法なども,研修活動に変化を与えると同時に,共通理解を深めるためにも効果的であろう。
 これまで,研修活動におけるフォーマルな組織づくりと運営過程について,コミュニケーションの視点から考察してきたが,そのほかにインフォーマルな組織におけるコミュニケーションの働きかけのあることも忘れてはならない。とかく,マンネリ化しやすい校内研修を反省し,内的要因から見直した校内研修の改善,充実に努めたい。

 註 1 国立教育研究所「紀要24集」   2 牧昌見著「学校の組織と運営」ぎょうせい   3 福島県教育センター「所報 52号」   4 大分県教育センター「紀要 7号」   5 福島県教育センター「所報 52号」   6 福島県義務教育課編「学校教育の手引」   7 後藤敏夫著「モラールとコミュニケーション」ぎょうせい   8    同            上   9    同            上  10 福岡県教育研究所連盟編「校内研究のすすめ方   「校内研究のすすめ方」第一法規

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