福島県教育センター所報ふくしま No.57(S57/1982.8) -026/038page

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アイデア紹介

創作教具のくふうと活用(理科)

南会津郡下郷町立江川小学校教諭  佐藤 正幸

1 はじめに

 理科教育の現代化にともない実験方法が,従来のような単なる理解を目的とするものや,検証のためより正確なデータを出すのを目的とするようなものばかりでなく,主として探求の過程を目的とするものへと考え方が変わってきたことは,すでに周知のとおりである。したがって,使用する実験器具もできれば既製の実験セット依存でなく,身の回りにある廃物等を利用し,児童に親しみのあるものを駆使して,初期の目的を達成するよう努力すべきであると思う。素朴な材料によって作られた不完全な実験装置による実験の過程において,はじめて新しいアイデアも浮び創造力も養われるのではなかろうか。
 要するに,既製の実験器具がなければ実験ができないというような考えを改め,利用できるものは,何でも利用して実験すべきである。このような過程を学ばせることも,ひいては科学の方法を学ばせることにもなる。このようなことを考えると,実験器具の自作も,もののない時代の代用品的なものとはその趣を異にすることはいうまでもない。
 このような観点にたって自作した実験器具を紹介しよう。

2 創作教具の活用

(1) 教具名 光学実験用送煙器
 光学実験にはなくてはならない教具である。市販されている物はない。これまで,児童一人一人が自作した暗箱の中で,線香を燃やして実験していたが,煙に濃淡があり観察に最適な煙が得られずに,現象がよく観察できなかった。また,一人一人が火を使うため,火気取り扱いの上からも危険性が多い。そこでこれらの問題を解消するために自作したのが写真 1の送煙器である。これを使うことによって,各グループに送煙でき,エアーポンプによって,拡散,送煙され理想的な煙が得られ,現象が明確で危険なこともなく,子ども達にじっくり観察させることができる。操作方法はキャップを矢印の方向に回しキャップをとり,中の容器の枯土に蚊取り線香5cm位に切ったものを3本位たて,点火しキャップをしてスイッチを入れると,写真 2のように送煙できる。
写真 1 写真 2
写真 1 写真 2

(2) 教具名 光学実験用暗筒

  1. 利用学年及び単元名
      3年生 単元名「かがみと虫めがね」
      5年生 単元名「光の進みかた」
  2. 5年のねらいは,光の直進,屈折,反しゃ,などの現象を通して,光の存在と性質を理解させ,光の法則性や本質にせまっていくのがねらいである。
  3. 暗筒の利用方法
     自作の送煙器と,暗筒をセットし,次に太陽と暗筒を平行にし,送煙することによって目的に応じた現象が写真 2のように観察することができる。
    写真 3 写真 4
    写真 1 写真 2
  4. 暗筒の利点
     ア この暗筒は,三脚で太陽と平行に固定できるので,じっくりと現象を観察させることができる。
     イ 現象を明確に再現でき,一斉指導等で,共通理解をはかるのに効果的である。
     ウ 考察の段階や仮説を立てる段階で,有効に再現でき,討論や思考を活発にすることができる。
     エ 子どもの興味,関心をよびおこし,子どもの思考活動を活発にし,新しい発想をうながすことができる。


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