福島県教育センター所報ふくしま No.58(S57/1982.10) -002/038page

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小学校教材

体育授業の改善をめざす評価のあり方
  − 第3学年のリレーを例に −

教科教育部  深谷 秀三

1 はじめに

 これまでの体育の評価は,児童指導要録や成績通知表に必要な評定をするために,単元終了時,学期末だけの総括的評価中心主義の傾向が強く,評価の中心は,単に早く走れる,遅いとかなどの運動技能の優劣のみを評価することにあったのではないかと思われる。学習指導要領は,学校や児童の実態に応じ教師の自発的な創意工夫を取り入れた学習指導を展開することを期待している。従って,このための評価のあり方も,技能中心の評価から脱皮して,体育の目標,学校・児童の実態に照らして,形成的評価を行いながら,児童がどのように変容したかを明らかにし,指導計画や指導法の改善に資することを目的にしたものでなければならないと言える。
 ここでは,第3学年の「ゲーム」の中のリレーを例にとって評価のあり方について述べてみたい。

2 体育における学習評価のねらい

 評価は,児童がどれだけ学習内容を身につけたかを目標に則して明らかにすることであり,評価の機能は一般に,次の三つにまとめることができよう。

(1) 評価は,児童自身が自己を理解することであり,教師が,児童のもつ可能性を発見するためのものである。すなわち,評価は,児童の実態に即し,児童達がどんな学習内容によって,どのように変容したかをとらえながら,個々の児童のもつ運動能力や運動を実践する場合の社会的態度などについて,その可能性を実現するためのものでなければならない。

(2) 評価は,教師自身の指導計画や指導法等の改善・充実を促すためのものである。

(3) 評価は,児童指導要録の記載,その他の必要を満たす上で活用できる資料である。

3 体育における学習指導と評価の関係

 学習指導の改善をめざす評価であるためには,リレーを例にとると,単元終了時に,チーム対抗のリレーを行い,勝敗を争うことで技能の評価をするだけでなく,学習活動全体を通して評価しなければならない。つまり,リレーの特性をふまえ,練習方法や規則づくりの工夫,公正な態度のとり方が評価のねらいとして重要なのである。従って,このような観点に基づいた評価資料を収集することが必要である。

    図 1 学習指導と評価の関係
図 1 学習指導と評価の関係

 図 1は,学習指導と評価の関係を図示したものであるが,このように評価は,診断的評価,形成的評価及び総括的評価と学習指導が表裏一体となって進めることが必要である。学習指導を通して評価資料を得るためには,今までよく見受けられた一斉指導の学習形態だけでなく,教師が常に,学級全体もしくは一人一人の学習活動を十分に観察できるように,自主的学習,グループ学習,個別学習などの授業形態を取り入れることが必要である。学習目標と内容をしっかりおさえた指導を行うとともに,一人一人がどのように変容しているかを,診断的評価,形成的評価に基づいて適切な資料を得ておくことが学習指導の改善のためには大切なことである。

4 第3学年のリレーの特性と評価の観点

 低・中学年のリレーは,集団で楽しみながら基本的運動能力を身につける「ゲーム」の一つとしてとらえられる。リレー学習は,低学年ではリレー遊びが楽しくできることに,高学年では陸上運動の中で,リレー・短距離走として記録を高めることをねらいとしているのに対し,中学年ではリレーの規則を工夫し,楽しくリレーすることをねらいとしている。3学年で行うリレーは,遊び方や規則を工夫しながら集団的に楽しむことが学習のねらい(図 2)


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