福島県教育センター所報ふくしま No.58(S57/1982.10) -014/038page

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受講者の感想

内郷高等学校 大橋 栄一氏

教育相談講座を受講して

内郷高等学校  大橋 栄一

−ディスコを踊る−

 軽快なディスコのリズムが流れ,講師の先生が,にこやかにリズムに合わせて踊り始めた。
 受講生も踊りなさいという。楽しそうに,リズムに合わせて踊る人,恥かしそうに体を動かしている人,実は,私は後者の方であるが,いろいろだった。2回,3回と,同じダンスを繰り返しているうちに振り付けもわかって,みんなの動きもよくなってきた。それでも,はじめての頃と同じように,ダンスに熱中できる人,そうでない人と,明らかに,相違がみられた。
 『私たち教師は,目の前の子供を「わかる」にしても,わかり方がちがう。既存の固定した「子供像」に照らし合わせて,それでわかったとする「わかり方」,もうひとつは,教師の前にある子供の独自なあり方,独特な生きた体験に心を開いて,そのありのままをとらえることによって,わかる「わかり方」と二通りのわかり方がある。
 楽 く,リズムにのって,できる先生は,ありのままの自分を,素直に表現できる先生。反対に,そうでない人は, 素直に表現することに抵抗感があり他人の素直な表出をも拒む先生であるという。
 子供の次元まで歩み寄り,子供が,何を考えているのかを,感じとる努力なしには,教育相談は成立しない。』という。『 』の所は,横内先生のことばを,そのまま書いたが,こんな楽しいダンスから,感受性訓練の講義が始った。

−教育相談とは−

 受講者が,二人一組になって,3分間は話し手に3分間はききてになり,たがいに,自己紹介をすることになった。きき手は,相手の話の内容だけでなく,その奥にある,話し手の心に耳を傾けるきき方をせよという。3分間ずつの作業が終わり,各人が相手の話の内容,その人の心情とか,人柄を披露することになった。初対面の人を,わずか3分間の中から得た知識で紹介することは,むずかしいことであるが,相手が自分をどのように感じとったのか,興味のあるのころであった。
 「顔をみると,こわい感じがしたが,お父さんのような心の広い人のようです」,「厳格そうだが,頼りがいのある人です」とか,各人が,精一杯,相手の長所を,話の奥からみつけて,紹介した。
 教育相談での「きき方」とは,このように,心情に耳を傾け,相手の気持ちを大事にすることだという。
 私は教育相談講座を受講するに際し,事前に,教育相談に関する本を読んでいた。専門用語が,ぼんぼんとび出してくるので,難かしい講座になるぞと覚悟していた。
 講座が始まってみると,ダンスやゲ一ムを通して楽しくやってくれるものだから,難かしい講義も楽に学ぶことができた。
 教育相談とは,頭の学問ではなく,体で学ぶべきものかなと理解した次第である。

−おわりに−

 「教育相談は相互的な人間関係の中で行われる」といわれるが,大変,むずかしい事だと思う。先生と生徒のふだんの信頼関係があるかどうかが,問題になる。教師の宿命が,教える,命令する,指示すると,従の関係に慣れすぎている。一斉授業,画一した生徒指導と,生徒を集団で捉え,個人に目を向ける訓練が疎かになりがちである。生徒が今どんな気持ちで授業を受けているのか,生徒の気持ちをわかる姿勢が必要である。問題生徒を責める前に,教師として,生徒にどのような係わり方をしているかを反省することである。生徒の要求が多様化している今,ひとりひとりの要求に応えることのできる教師あらゆる要求に応じられるために,教師自身の自己改革が第一に望まれている。
 教育相談講座を通して,講師の力説されていたのは,教師自身の自己改革と私は理解した。ディスコを,楽しく踊る先生をめざす所存である。


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