福島県教育センター所報ふくしま No.58(S57/1982.10) -016/038page

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研究報告

集団生活を高めるための道徳的実践力を育てる指導

伊達郡月舘町立月舘中学校  斎藤 四郎

1. 研究の趣旨

(1) 研究の動機とねらい
 家庭や学校で体験する集団生活のあり方は 将来の社会生活への影響が大きい。それは,学校の学級や学年及び生徒会などの活動の中には,人間関係や組織活動のような役割や機能が含まれているからである。しかし,学校生活の基盤となる学級集団の活動は,必ずしもその役割や機能が十分果たされているようにはみられない。それは,生徒相互の理解や協力が不十分であったり,学習意欲に乏しいことや,役割と責任が軽視されることからうかがえる。
 そこで,集団生活を向上させるためには,その中に含まれる道徳的事項を意識させ,それを実践にうつす態度があれば,日常の生活はさらに高まると思われることから,この研究主題を取り上げて,生活の中の道徳的事項を明らかにしたい。

(2) 問題点
 「集団生活の向上」をめざすために,学級集団の活動の現状から問題点を把握するための調査を実施した。その結果〔表 1〕集団の一員としての自覚はほぼ確立していて,言われたことを守り行おうとする。しかし,相互の立場の理解や個性の伸長が図られず,また心身の発達をめざそうとする協力的で実践的な態度には欠ける傾向がある。特に「集団を愛する」ことや「自覚を深め協力する」ことについては女子生徒の意識が低い。

    <表 1> 集団生活に関する調査の結果(S56、6、23実施)

項 目        回 答 よ い (%) わるい (%)
集団を愛する 64 30 46 36 70 54
きまりを守る 74 65 69 26 35 31
役割と責任を果たす 53 50 51 47 50 49
立場を理解し仲よくする 21 20 21 79 80 79
心とからだを育てる 26 15 21 74 85 79
個性を伸ばす 48 35 41 52 65 59
自覚を深め協力する 74 40 57 26 60 43
事に進んであたる 21 20 20 79 80 80

 なお、事前に実施した道徳性検査の結果は次のとおりであるが,まとめると<図 1>のようになる。
図 1
  1. 道徳性偏差値は男子の方がやや低い。
  2. 個人道徳よりも社会道徳の方がやや低い。
  3. 学級の道徳性の傾向は3の段階で全国並みであるが男子は特に社会道徳の判断が劣る。しかし、女子でも,個人道徳の心情の得点は低い。

(3) 原因
 [1] 生徒側
  ア 自己中心的な態度の傾向にあり,広い心が養われていない。
  イ 最後までやりぬく強い意志や正しいことに勇気をもって実践する態度にかける。
 [2] 数師側
  ア 生徒の心身の発達段階に応ずる適切な援助指導への配慮が不十分である。
  イ 責任感や奉仕の精神の養成と組織を生かした活動への援助指導が不十分である。

2. 仮 説

(1) 仮説のための理論

  1. 「望ましい集団生活」とは
      人間関係において,個人が尊重され,個性の


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