福島県教育センター所報ふくしま No.58(S57/1982.10) -024/038page
めに構想されるものであるから,その当否は,根本的には,それに従って行われた児童・生徒の学習成果によって判定されるべきである。」(註 2)といわれるように,個々の児童・生徒の発達状況や学習成果の把握を評価の第一義においているということで,その考えは同じ方向にあるとみられる。
「教育評価とは,教育過程で生じる児童・生徒の学力・体力・人格等の変化を教育目標に照らして判定することである。」(註 3)という教育評価の考えや,「アカウンタビリティー(Accountability)とは,学校や教育委員会などの学校当事者は,自分たちが行っている教育課程がどれだけの成果をあげているかを,教育の主権者であり,納税者であるところの市民に報告する責任があるという教育成果報告責任をいう。」(註 4)という,近年アメリカの教育評価を特色づけている考えも,教育目標が児童・生徒一人一人にどのように達成されたかを明らかにすることが教育課程評価の本質であるという考えにたつならば重視されなければならない問題である。
しかし,教育課程の評価はあくまでも,教育課程の編成,実施をより適切なものにするための資料を得て,改善の方向性を明らかにするとともに,具体的な方策を立てることにある。児童生徒一人一人に対する教育目標達成評価も,学力・行動の評価も,成果の報告責任や学習活動の成果を結果的にとらえようとする目的から行われるのではなく,この評価活動並びに結果を,次の教育課程の編成にどのように生かし,実際の指導計画や指導方法の改善にどのように結びつけるかという考え方でとらえられなければならないであろう。即ち,本研究においては,児童・生徒一人一人の学力や行動の評価も,評価結果から個々人をとらえるのみでなく,その結果を教育課程改善の一資料として生かすことに重点をおいて行われなくてはならないと考えるのである。
教育課程評価の特質の一つとして,「教育課程の評価は,個々の児童・生徒の教育決定ではなくすべての児童・生徒や,学級・学年・学校に共通にかかわる教育内容・方法に関する選択・決定を下すことに関連している。」(註 5)と述べられているように,個々の児童・生徒の学力・行動評価を,あくまでも,教育課程経営上の諸問題の解決,ひいては教育課程の改善の資料を得るために行う評価活動と考えていくべきであろう。
おわりに
以上,本年度の研究概要の一端を述べてきた。教育課程評価についての理論,特に教育現場において教育課程評価を実際にどのように進めるか,教育課程評価票をどのように開発するかなどの具体的な問題に関する参考文献となると数少ないようにも思われる。したがって,今後の理論構築には困難も予想されるが,調査によって明らかにされた研究課題を追究し,教育現場の実践に生きる研究を目指して,更に研究を推進していく考えである。
本研究は,教育課程経営に関する基本的事項の確立とその実際について解明していくとともに,あわせて,新教育課程にかかわる実態を総合的にとらえ,その資料を各学校に提供することにより,教育課程経営の改善・充実に資するという二つのねらいをもった研究である。本年度の研究紀要も,このねらいに沿ってまとめ,本年度末に刊行する計画であるので,第1年次紀要第45号とあわせて活用し,教育課程経営の実践に役立てていただきたい。なお,本研究に関する教育現場の諸先生方の御意見をよせていただければ幸いである。
「教育課程の経営に関する研究」研究プロジェクト 羽田義光 大越勝忠 菅原文也
加藤茂雄(研究委員長) 折笠仙衛 笹川征喜 須永英次(研究推進委員) 斎藤洸旦 佐藤清子 佐藤 武(同 上) 松本喜男 佐藤晃暢 佐藤嘉之(同 上) 吉田昭典 小林正守(同 上) 石田 威
註 1 学校経営実践講座2 第一法規
註 2 教育評価辞典 国土社
註 3 現代学校経営用語辞典 第一法規
註 4 現代学校教育全集15 ぎょうせい
註 5 同 上4 同 上
他 小学校指導書 教育課程一般編 文部省
小学校教育課程一般指導資料1 文部省
教育課程編成の手引 県教育庁義務教育課編
福島県教育セソター紀要 第43号 第45号