福島県教育センター所報ふくしま No.58(S57/1982.10) -030/038page

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アイディア紹介

楽しい工作指導の中から、技法の工夫

耶麻郡北塩原村立大塩小学校教諭  高橋 禮夫

1 はじめに

 児童にとって,物を作ることは大変楽しいことであり,深い関心を持っている。いろいろな物を見ると,手に取ってみたくなるし,自分で作ってみたいという気持ちになるものである。

 図工科6年生の目標に,「用途や美しさを考えてデザインしてつくる能力を伸ばす」とある,この用途は,使用する目的や条件を考えて作るということであり,美しさは,形からくる美しさと,塗装による美しさを考えなければならないということである。また,物を作る場合,工夫の技法を身につけなければならない。切る,削る,つける,ぬるの4つの基本的な技法をいかに簡単に指導するかで楽しくできるかが決まると考える。さらに,工作は,ただ物を作るのではなく,作った物を使うということを最初から考えて作らねばならない。このことは自分の生活を楽しくするとともに形はどうだったか,塗装はどうだったか,道具の使い方はというように反省することができるし,他の作品に対して関心を持たせることもできる。

2 教科書では

 図工科6年の教科書(日文版)では,「1枚の板から」ということで朴(ぼく)板を使って箱を作る例がでている。私の指導した経験では厚さ1cmの板を寸法どおりに切ったり,削ったりさせることは道具のそろっていない小学校では大変困難であった。また,塗装はニス仕上げになっているが,小学生らしい色彩豊かな塗装の方法はないかと考えてみた。

3 実践例 (指導過程から抜すい)

 − 美しい小物入れの箱を作る −

(1) 箱を作るための条件

  1. 機能的な面
     ア、 学用品や身のまわりの小物を入れる大きさの箱。
     イ、 出し入れしやすくじょうぶな箱。
  2. 装飾的な面
     ア、 形の楽しい箱
     イ、 塗装が美しい箱

(2) 材料

  1. シナベニヤ (厚さ6mm)
    朴板よりやわらかいので,作業が簡単である。
  2. 木工用ボンド
  3. 水性塗料
    用具は水洗いでき後始末が簡単であり,混色も自由である。
  4. 水ペーパー(800番〜1000番)

(3) 製作

  1. 画用紙で箱の模型をつくる。アイディアスケッチの中からよいものを選んで寸法を決め,実物大に切り取り,セロテープでとめて箱を作る。児童は,この作業をやらないと大きすぎたり,小さすぎたりして,なかなか全体の大きさをとらえにくい。
  2. 木取り
    組立てた箱をばらして,板の上にならべ木取りをする。
  3. のこびき
     ア、 のこぎりは横びきをつかう。
     イ、 のこぎりの角度を小さくし,線にそって引くように切る。
     ウ、 板を固定するために,版画板をつかう。
     エ、 2人組にして1人はおさえる。
     オ、 与える板は版画版にのる程度の幅がよい。
    図 1 図 2
    図 1 図 2


    版画板を図 2のように机にひっかけて切ると,板が固定されて動かず線にそって切る事ができる。また,材料に対してのこぎりの角度を小さくするのはまっすぐ切るためである。児童は,技術的に未熟であるから角度を大きくすると曲がってしまうことが多い。ここで大切な事は,底板を寸法どおり切っても小さくなってしまうので,あらかじめ周囲を5mmぐらい余裕を持たせて切らせる事である。


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