福島県教育センター所報ふくしま No.58(S57/1982.10) -032/038page

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アイディア紹介

一石低周波増幅回路の構成力を高める学習教具のくふう(技術・家庭科)

郡山市立行健中学校教諭  富永 孝夫

1 はじめに

 本教科は,生徒の主体的な創造的,実践的活動を通して生活に必要な技術を習得させることを目指している。しかし,今日特に問題となっているのは,生徒に 自ら学びとらせる授業 へと質的転換をはかれないでいることである。

 そこで,電気領域2の教材でくふうした例を紹介する。電気2の内容は「増幅回路を用いた装置の設計と製作を通して,電子のはたらきと利用について理解させ,電気機器を適切に活用する能力を伸ばす」を目的としているので,特にトランジスタを使用する一石低周波増幅回路の製作学習における回路構成力を高めるための問題はつぎの点が考えられる。

(1) 回路部品のはたらきとして回路構成能力を高めるためにどの程度まで理論指導をしたらよいかはっきりしていない。特に,半導体の指導では電子やホールに言及することはさけ,ブラックボックスとして現象的にだけふれる場合である。
(2) 回路要素部品のはたらきを理解たせても,低周波増幅回路としてのはたらきまで転移できない生徒が多く,回路構成力が弱い。
(3) 回路構成部品の定格値を使用目的に応じて選択しなくてはならないが,その手立てが明らかでない。
(4) 回路定数の変化が増幅作用にどのような効果をもたらすか実験を通して理解させたいが,その方法が具体的に実践されていない。

などが考えられる。そして,その原因は,

(1) これまでの回路要素学習は個々の部品が独立しての学習であり,学習内容も形式や名称,種類が中心であった。また,そのしくみやはたらき,使用上の注意なども,他の回路要素を考えた関連学習ではなく,回路構成過程を大切にする指導過程でもなかった。
(2) 即ち,トランジスタ増幅回路に結びつける要素学習という観点がおろそかにされていて,各回路要素の動作実験のトランジスタ増幅回路をふまえたものとして指導されなかったところに回路構成力の乏しい原因がある。
(3) OHPを活用し,生徒に考えさせる授業を試みた結果,理論的な考察はある程度までの成果を修めたが,生徒自らが創造的,実践的活動を通して課題を解決する指導法はさらに工夫改善を要する。

2 問題解決のための手だて

 回路要素学習は,回路構成に関連づけてしくみやはたらきを指導するとともに,生徒が自ら課題を解決する指導過程に改善するため,つぎの教材教具を独自に開発し,多面的な指導を試みた。
回路構成力を高める指導過程の改善

3 実践例

(1) 板書事項 (学習ノート)は,中教研発行の内容を中心にすすめたが,課題の発問を吟味し,生徒の考えを引きだすよう工夫したせいか,生徒は,予習課題をかなり高度な内容を準備してくるので基本要素に焦点を紋りじっくり検討させた。
 (紙面の都合で学習ノート例は省略)

(2) 自作TPを積極的に活用する。市販のTPでよいものもあるが,指導の内容やねらいに即し,学習者の実態にあったものは少ない。また,学習指導の展開を細部にわたって具体的に検討するので生徒の実態に応じていやおうなしに自作TPが要求される。そして,自作教具を使って授業をすすめると,生徒の反省で敏感に感じ,教師自身に喜びや反省が生じてきて,つぎの教材製作にさらに生かされる。
写真1(自作TP)
    写真1(自作TP)

(3) 演示用実験回路 を自作し,増幅回路の要素部品のはたらきを定性的に理解させるとともに,増幅

〔例 1〕 静特性回路 〔例 2〕動特性回路
〔例 1〕 静特性回路 〔例 2〕動特性回路


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