福島県教育センター所報ふくしま No.59(S57/1982.12) -036/038page
アメリカの入学試験について
文部省英語指導主事助手(福島県派遣) ジェームズ ホランド
私が学校を訪問しますと,よく,アメリカの入学試験についてたずねられることがあります。多くの方々が関心をもっているようですので,以下,このことについて述べてみたいと思います。
アメリカの公立高等学校に入学することはとても簡単なのです。入学試験はありませんし,学校を選択するということもありません。
生徒は自分の町の中学校を卒業しますと,そのまま,まっすぐその町の高等学校に入学します。一つの町の生徒は,みな同じ高等学校に入学することになるわけです。ですから,高等学校にはさまざまな生徒が入ってきます。また,いろいろな教科があって,そのなかから生徒が自分の学びたい教科を選択するのです。大学への入学となりますと,かなり複雑です。私の経験によりますと,大学に入るためには,次の四つの要素から評価されると考えます。どの要素も重要性においては同じで,大切な条件になるわけです。
(1) 高等学校の先生からの推薦書
これには,特に生徒の個性や勉強に対する真剣さについて記されております。(2) 高等学校で学んだ全教科の成続表
もし,全体をとおしての成績がよければ,その生徒は,どの教科についても勉強のしかたを知り,すすんで勉強に励む,ということを表します。このことは,ただ入学式験のためにのみ一生懸命勉強するのとは大部ちがっております。(3) 決まった主題についての小論文
代表的な主題は,次のようなものです。
“なぜ君はこの大学に入りたいか”とか,“将来君は何になりたいか”などです。これは,生徒の自己表現の能力を試すものです。たとえその生徒が頭がよくても,自分自身を表現する才能がなければ,立派な大学生とは言えないのです。(4) 試験
二つの全国標準入学試験があります。そのテストのうち一つから得点を求める大学もありますし,他のテストから得点を求める大学もあります。生徒は自分の希望している大学へその得点を提出します。また,生徒はテストを受け直して,一番よい得点を提出することもできます。
試験は,事実の知識をテストするというよりは,創造的に考える能力をテストするのです。それゆえ,生徒は教師から,試験に備える最良の方法は,高等学校でどの授業も熱心に勉強することで,試験のために詰め込み式の勉強をすることは意義がないと常に教えられています。大学は,これら四つの要素を全部重視しているわけです。たとえテストの点数がよくても,もし高等学校での成績が悪ければ,立派な大学生としての資質を持ちあわせていないことを意味するのです。あるいは,テストの点数がよくても,その生徒が小論文で自己表現の才能がなければ,合格しないこともあるということなのです。
私は,日本の入試制度と比べて,アメリカの入試制度が,より広い分野の中での,学習に対する取り組み方を重視していると思います。それは,生徒の個性を重視し,自分の知っていることを生かして.創造的な思考ができるかどうか,また生徒が確かな勉強のしかたを伸ばしているかどうか,それに生徒が自分自身の意見を表現できるかどうかを試すものなのです。(英文を要約)編 集 後 記
「「くしゃみにはは,くさめ(嚏),はなひり,はくしゃみなどの言い方がある。くさみ,はなひりは古文にもみられ,呪文や占いに使われている。例えば,くしゃみをしたときに「くさめくさめ」と呪文を唱えないと死んでしまうと信じる尼御前のこと(徒然草)「嚏ときは人の説くあり」−くさめの出たときは人が自分のうわさをしている−(詩経)などがある。今日でも「一褒められ,二誹られ,三惚れられ,四風邪をひく」のようにくしゃみ占いをすることがある。迷信とは思いながらも,くしゃみが二つ出たときは,三つしたくなるものである。 M.M