福島県教育センター所報ふくしま No.60(S58/1983.02) -004/038page

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絵の具遊びの例 効果的な用具
・絵の具をつけた筆を,ふったり,たたいたりして美しい画面をつくらせる。 堅い筆 不透明水彩
・紙をたてて絵の具を流し,自動的にかき出される線の美しさや,自然にできる混色の美しさを味わわせる。 柔い筆 不透明水彩,透明水彩
・紙の上に絵の具をたらし,それを吹いてできた図形の中からいろいろなイメージを見つけたり色の重なりの美しさを感じとらせる。 柔い筆 透明水彩
ぬれた画面の中にいろいろな絵の具をたらし,にじみの美しさを味わわせ,画面の中にさまざまなイメージを見つけ出させる。 柔い筆 透明水彩
・絵の具をつけた糸を二つ折の紙の間を通したり,紙の上ではじいたりしてできる線の美しさを味わわせる。 たこ糸,もめん糸 不透明水彩

イ.水彩絵の具による彩色指導を発達段階に合わせて行う。下表に,水彩指導の学年ごと到達目標の一例を示した。

到達目標の一例  

ウ.混色の基本練習
・三原色の内,A・B2色を取り出し,Aの量は一定とし,Bの量を少しずつ変えて,Aに混色させる。
・暖色係の色や寒色係の色だけによる混色をさせる。
・有彩色に無彩色の白や黒を少しずつ量をふやして加え混色させる。
・無彩色のグレーに有彩色をほんの少し入れ,色味のあるグレーをつくらせる。

<混色練習の応用例>
例1.画用紙にフリーハンドで教本の曲線をかかせ,できた形に,それぞれの好きな季節感などを考えて彩色させる。
例2.八ッ切り画用紙を斜めに切り切断した三角形の画用紙を床や壁などに隠くれて見えなくなるよう絵の具やその他の描画材で彩色し工夫させる。

エ.混色するときの留意点
  ・明るい色に暗い色を少しずつ混ぜさせる。
  ・筆にふくませる水の量に注意させる。
  ・筆の洗いをしっかりさせる。

(3) 鑑賞を深めさせるために
 鑑賞指導については,特に留意したい点について述べる。
 1 児童の作品の鑑賞会を持ち,友だちの作品の良いと思うところのみを発表させる。かならず1枚の絵には,その絵だけの良さが形や色や動きに,また,全体の雰囲気や部分の調子などに見られることに気づかせるようにする。
 2 児童の作品の表現が未熟であっても,その子なりによく努力したことを認め,さらに,その子なりの努力の目あてを指摘してやる。

5.おわりに

 小学校中学年では,高学年になって主題や意図を明確にした絵画表現ができるようになるための基礎を養わなければならない。
 この場合,一人一人の表現欲求・特性・能力に合った指導を通し,情意の正常な発達を図るようにするとき,単に技法や感覚の訓練に陥ることのないように十分留意しなければならない。また,児童が,自分の作品を大切に保管する習慣を身につけさせることなども必要なことである。
 ここに述べたことが,中学年の絵画表現のつまずきの解決のために参考になれば幸いである。
<参考文献>
 ・小学校指導書 図画工作編(文部省)
 ・児童画・その見方と指導(東洋館)
 ・描画指導のポイント(日本文教出版社)
 ・実践造形教育大系bS,9(開隆堂)


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