福島県教育センター所報ふくしま No.60(S58/1983.02) -010/038page
教 育 工 学
わかる授業にせまる教育機器の活用
(その5)―反応分析装置の授業への導入― 経営研究部 田母神 淳
1.はじめに
前回までに,OHP,スライド映写機,TV受像機やVTR等のマス・コミ型(教師→学習者集団)の情報提示機能をもつ機器について述べてきたので今回は逆マス・コミ型(学習者集団→教師)の教育機器で学習者の反応を検出するのに用いる反応分析装置についてふれていきたい。2.学習者の反応を確実に把握
授業中,教師から学習者にいろいろな方法で情報が提示され,一段落したところで教師の「わかりましたか」のひとことで学習者の反応を見たとする。このときの学習者の反応はさまざまであるが,教師はそれらの反応をどう受けとめるだろうか。学習者のうなずきや顔色で大体予定した人数ぐらい理解できたと判断したり,あるいは挙手の状況で次の学習をすすめていくことはないだろうか。単にうなずきや挙手だけでは,「本当にわかったのか」とか,「わからない者はだれか」,「その割合はどのくらいなのか」という大切なチェックが明確になされていないことがある。このようなとき反応分析装置を使用すれば,正確にチェックできる。下記のグラフは,選択肢問題A,Bについての回答結果を,挙手,アンケート方式,反応分析装置による回答に分けて比較したものである。挙手とアンケート方式とを対比してみると,Aの場合のように学習者の反応を見るとき,挙手で行うと著しく正答が多くなることがある。
これは挙手の方式では他人の影響を大きく受ける場合があることを示している。これに対し,問題の難易度などで多少の違いはあるが,Bのようにアンケート方式と反応分析装置とではほぼ同じような結果になることがある。しかし反応分析装置には即時に結果を処理できるという利点がある。だからといって,反応分析装置が挙手に代わるものではなく,挙手では調べられないことを明確にするために反応分析装置を使うわけであり,もちろん挙手も重要な一方法である。3.反応分析装置の種類とその機能
反応分析装置は,それ自身が映像を提示したり,音声を出して教材を提示する機能はもたず,逆に学習者の反応を教師に伝えるなど,いわば学習者と教師との間でコミュニケーションを成立させる機能をもった教育機器であるといえる。反応分析装置の構成は複雑なようにみえるが,基本的には学習者が各自1個ずつもつ回答器(子器)と,これらの回答器と結ばれて,それぞれの反応をとらえてまとめる教師側の本体(親器)とからなっている。種類も多いが大別すると次のようなものがある。ア 学習者全体の反応しかわからないもの
イ 学習者全体のほか個人ごとの反応もわかるもの
ウ 反応がわかると同時に記録もとれるもの
エ 反応がわかり記録がとれるほかに,他の機器と連動しているもの
オ 反応がわかり記録がとれるほかに,採点や得点集計などを自動的に処理できるもの
回答器の選択肢数でも,3肢や5肢選択などがあるが,3肢選択のものでもよく,できるだけ複数なものはさけ.ア〜ウあたりで十分である。
反応分析装置の未設置校でも,電気回路や反応収集機能はなくても,右のような学習者に自分の意志を番号で表示させる「反応具」なら簡単に自作もでき,使用方法の工夫によっては立派にその代役を果たすことができる。