福島県教育センター所報ふくしま No.60(S58/1983.02) -011/038page
反応分析装置には,多くの機能や特性があるが,特に次の3つの教育的機能を重視したい。
ア 計数機能
選択肢分布を瞬時に,正確に計算し表示する。
イ 保持機能
一度押すと,ランプが点灯したまま保持される。
ウ 守秘機能
だれが押しているか,他の学習者にはわからない。このような機能を利用して,いままでの授業を振り返ってみて,たとえば次のような点について,改善・充実を図ってみたいと考えたとき,反応分析装置は有効な機器となるはずである。
ア 学習者一人ひとりの理解の度合いや,学習の進度の状況を正確に,しかも迅速につかみ,適切な指示や指導を個別に行おうとするとき
イ 学習者全体の学習進度,意見の傾向などを的確につかみ,授業を効果的に展開しようとするとき
ウ 学習者の反応を記録,分析して適切なフイードバックをするとともに,授業の方法,教材の選択などの授業計画を十分に行おうとするとき
エ 学習者と教師,あるいは学習者相互間のコミュニケーションをいっそう向上しようとするとき4.反応分析装置の利用場面と利用上の留意点
反応分析装置を用いた場合,その測定の対象は学習者の知識・理解,興味・関心,考え方,学習の速さ,作業終了など広い範囲に及ぶが,具体的に授業の中では次のような場面での利用が考えられる。
ア 出席の確認 イ 前提条件の調査 ウ 討議や集団思考への利用 工 学習や作業の進行状況の確認 オ 説明の仕方の良し悪しの点検 力 意見や質問の有無の調査 キ 課題解決状況の確認 ク指導の要所の評価 ケ 授業の終わりにまとめとしての利用 コ アンケート等の集約
多数の利用場面が考えられるので,授業の設計にあたって十分に吟味した利用を考える必要がある。反応分析装置の使用には,特別な指導計画が必要なわけではないが,授業設計にあたって学習目標は明確にしておきたい。そしてできれば「どのような条件」で,「何」が「どのように」できるようにするのかを具体的にしておきたい。また,いつ,どこで,どんな内容を,どのように反応させるのかを授業案に簡単に位置づけておきたい。そのため,授業案はフローチャート形式で書いていく方法もある。次に操作にあたって留意することは,機器使用により学習者に疲労を与えないことである。そのためには使用回数や時間も1単位時間の中で,せいぜい4〜5回,継続使用しても10分以内にしたい。学習者の反応についても,教師が「自分の教えた内容を学習者が理解してくれたかどうかを確かめるための反応であって,学習者を評価するものではない」ことをあらかじめ理解させておきたい。そして反応には,必ずKRを返すこと,またできなかった者には治療をほどこすなど,学習者に成功感を味わわせることも忘れないでほしい。
選択肢を作る場合も,学習者が当てようとするのではなく,自分の考えを伝えるのだという心理になるように配慮したい。したがって,5肢選択の回答器であっても,無理に5つの選択肢を作ることはない。たとえば,1〜3までを有効選択肢にし,4〜5に「その他」,「わからない」という選択肢を入れ,いつも学習者の考えを引き出すような配慮や,ときには学習者自身の作った選択肢で反応させるなど,学習者が受け身の反応にならないようにする。また回答時間を十分にかけ,機をみて回答締め切りやフイードバックを行うことも大切である。5.おわりに
講座の講義の際に,研修者に次のような質問でボタンを押してもらった。「あなたは,授業に反応分析装置を利用するには」1(四角囲み)とくに準備しなくてもよい 2(四角囲み) 十分な準備を必要とする 3(四角囲み) どちらともいえない 4(四角囲み) わからない 5(四角囲み) その他 結果は,どの講座でも1(四角囲み)は極めて少なく,2(四角囲み)が90%をこえる回答率であった。反応分析装置は指導計画や選択肢の準備が十分でないとだめだという考えが強いようだった。たしかに先にもふれたように,それなりの準備があれば申し分ないが,反応分析装置は教師と学習者の心をボタン1つで結びつけるコミュニケーションの道具と考え,まず気軽に使用してほしい。一般に教育機器を活用するには,その機器の特性や機能を熟知していることが重要であることはいうまでもない。しかし,それまで授業は待っていてくれない。教育機器は,根気強く,継続して利用することが効果的な活用へつながる大きな踏み台になっていく。そして,そこから得た熱意と自信が,やがてわかる授業への活路となり,学習者に還元されていくのではないだろうか。
<参考資料>授業を活かすアナライザー(教育工学杜)