福島県教育センター所報ふくしま No.60(S58/1983.02) -012/038page

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教 育 相 談

教育相談における交流分析

(TA…Transactional Analysis)の利用について(1)

−交流分析の概観(自我状態を中心として)−  教育相談部 佐久間 益 郎

1.はじめに
 交流分析(T_ransactionalA_nalysis以下TAと略)は心理療法のひとつとして発展してきたが,現在は心理治療の場だけでなく,より充実した生き方,よりよい人間関係,明るい家族関係などをつくる手がかりとして,幅広く,教育や自己開発の損などで用いられてきている。当相談部でもTAについて研究をすすめている。今回はTAの概観について紹介したい。

2.交流分析(TA) とは
 1950年代の中頃に精神分析学者であるエリック・バーンは,賭博狂を治したいと願う弁護士の治療をしていた。この患者は弁護士としては一流であったが,ギャンブルに対しては,勝つと縁起をかつぐ行動をしたり,負けると,「100ドル持ってきて,たった50ドルしか負けなかったのだから,今のところ50ドルもうけた」などと,奇妙な論理を用いて損失を解釈した。バーンは,この患者の中には弁護士業務を立派に果たすことができる論理的思考の面とギャンブルに見られるような非合理的にふるまう幼い子供の面が共存していることに気がついた。あたかも患者の中に違う面を持った人々が存在して,そのうちの誰かが患者の全体を支配しているように見うけられるのである。このようなことからバーンは,人がある事柄に直面すると“一貫した感情や行動”で対処することを発見し,これを“自我状態”と呼んだ。以上のことより,人は自我状態で交流し,この交流の仕方を分析すれば人間行動を理解することができると考えた。そこでバーンは,自我状態を基に自分の人格構造を知り,他人との交流の仕方を知ることによって,自分をはっきり理解できるTAという心理療法を考え出した。TAは自分の中で変えたいと思う事柄を変えたり,強化したいと思う事柄を強化することができる。つまり,自律性を高めることができる方法の一つである。

 (1) 自我状態
 バーンは自我状態を大きく,ペアレント(P,親)アダルト(A,大人),チャイルド(C.子供)の3つがあるとした。図式では一人の人の自我状態を,三つの同じ大きさの円で表現し,ペアレントが上,アダルトが真中,チャイルドが下と並べて描く。
 自我状態には,それぞれの状態に特有の気持,物の考え方,行動の特徴があるので,例を挙げて以下に述べる。

例

 ペアレント(P)の自我状態とは,育ててくれた人(父親,母親など)が子供に示す感情,態度,行動のパターンを自然にとり入れて,自分のものとして,言動などにあらわしている状態である。さらにPには叱ったり,厳しくしつけたりする父親的な機能を示す批判的P(CP又はFP)とやさしく保護する母親的な機能を示す保護的P(NP又はMP)の2つがある。

批判的P(CP)の自我状態とは
 生命,安全,規律を守ったり,叱責.きめつけたりするような言動などをとっている状態。
   例えば
   「あぶない!!」「タバコをすうな!!」
   「バカヤロー!!」「お前はいつもこうだ!!」

保護的P(NP)の自我状態とは
 元気づけたり,支持したり,又,おせっかいや甘やかす言動などをとっている状態。
   例えば
   「それでいいんだよ」「私がついているよ」
   「お茶を入れてあげましょう」
   「おこづかいをあげよう」


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