福島県教育センター所報ふくしま No.60(S58/1983.02) -033/038page
(4)評 価
中学生の職業高校についての理解は,中学校の教師や父兄,あるいは先輩,友人などからの断片的,間接的なものを通じてであり,本校受験を考えている生徒などは少なからぬ不安を抱いていたに違いない。その意味において,実際に本校に来て,校舎設備の見学のみならず,それぞれの科の実習に参加できたことは,より直接的に本校の内容,更には職業高校の内容が理解できたのではないかと思う。中学生の体験入学に関するアンケートの集計結果などを見ても,「内容がだいたい理解できた」が最も多く全体的な評価としては,おおむね成功であったと思われる。また,本校生が実習に参加したことが,中学生にたいへん好評であった。機械化の旋盤・鋳造実習,家政科の調理実習の際に,本校生1クラスを参加させ,高校の先生からだけではなく,高校の先輩に手ほどきを受けるという形態をとったことが,中学生には大きく印象に残ったようである。「本校生との質疑応答」の時間にも,楽しい雰囲気の中で先輩に対して学校生活の細部にわたる質問が寄せられ,先輩の生の声を聞こうとする積極的な態度がうかがえた。職業高校の理解には見学,実習だけではなく,中学生,高校生間のコミュニケーションが大きく作用することも見逃せない点である。
4. 校内相互体験学習
副題Tのテーマでもある「職業教育に対する正しい理解」は,校外の人々にはかられることは当然であるが,校内の生徒たちは,果して正しく職業教育そのものを理解しているだろうか。幸い本校は農業工業,商業,家庭それぞれの課程を有し,職業高校生としての自分を考えるよい機械に生徒たちはおかれているのにもかかわらず,必ずしも白河実業高校全体の内容が理解できていないように思われる。将来の産業人としては,一つの科を中心とした偏狭な意識よりも,多様化する産業構造に対応できる幅広い職業人としての基礎を育成する必要があるのではないか。以上のような反省をもとに,以下のような互いに他の科の内容を体験学習する,いわゆる校内相互体験学習を計画し,実施した。(1)期日の設定
新入生の「ゆとりの時間」(金曜日第1校時)を活用する。
(2)実施対象者
第1学年生全員
(3)実施方法
学科の学習内容が相互に関連の深い科同士を組み合わせて交換実習を行う。
(例) 農業科と機械科
(農業機械の構造.操作等)
(4) 学習の内容
1,1学年全体オリエンテーション
2,実習をする科でのオリエンテーション
3,VTR番組視聴(今回体験できない科については,自作番組で内容を知る。)
4,アンケート調査記入
(5)各科実習内容
この稿では紙面の都合上,すべての内容を紹介することができないので,1例として,電気科と家政科の交換実習の内容を紹介したい。
・電気料(家政科の生徒が実習)
家庭用電機器の修理の実際
・家政科(電気科の生徒が実習)
テーブルマナー
バナナの食べ方,コーヒーののみ方
(6)評 価
今回の校内相互体験学習では,時間的な制約もあり,試験的に二つの科の間での交換実習にとどまったが,本来の趣旨からすれば,自分の科以外のすべての科を体験することが望ましい。しかし,はじめての試みで十分な準備ができなかったにもかかわらず,計画どおり日程が消化でき,生徒のアンケート結果をみても,他の科の内容が理解できたようであり,全体的には,おおむね成功であったと評価できよう。特に,学年を中心とした科の間の連携が実現したことは大きな収穫であったと思われる。5.おわりに
この稿では,それぞれの項目の細部にわたって詳細に記述することができなかった。詳細については昭和57年度11月発行の研究成果報告書をごらんいただきたい。