福島県教育センター所報ふくしま No.60(S58/1983.02) -034/038page

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<アイディア紹介>

児童手帳「梅の香り」の作成と活用

   いわき市立平第二小学校     

     (生徒指導部)教諭  井上 忠夫

1.はじめに
 わが校にも,現在社会問題となっている非行の低年齢化,登校拒否,家庭内暴力等の兆しが表われはじめたのは,数年前からであった。
 生徒指導部では,指導体制の強化だけでなく,児童の内面にせまり.学校と家庭との連絡協調を密にして児童理解を強化し,子どものゆめや希望を大事にしながら,向上心や自主性を育てるようねらいを定め,児童手帳「梅の香り」を作成し,全校をあげて,その活用を推進してきた。

2.「梅の香り」のあらまし
 児童手帳「梅の香り」は.全体が「ピンク版」と「とじこみカード」の2部分から成り,1冊のファイルに綴る形式にした。
(1),ピンク版「梅の香り」(全9頁)
1,本校の教育目標と具体目標
2,「わたしのゆめ」の欄………児童記入
3,「わたしのめあて」と反省の欄(学期ごと)
・ゆめを実現させるめあてと反省………児童記入
4,家庭生活のしおり………家庭の習慣形成資料
5,学校生活のしおり………校内の習慣形成資料
6,毎月のめあてと反省の欄………児童記入
・3を具体化しためあて。毎日,児童が,実行可能で,自己評価(○,×)できるめあてにさせる。
7,家の人のことばの欄………父母が子どもへ書く。

(2),とじこみカード
1,学習の記録
 授業で学習したことを記入させる。学習内容で理解できなかったこと,もっと知りたいこと疑問に思ったこと,教師の指導への意見,感想や要求など,児童の創意を生かして記入させる。
2,じゅんび,れんらく
 翌日の学習準備物や諸調査物等を忘れないように記入させる。
 また,担任と父母との連絡の欄として利用する。
3,日 記
  生活日記を自由に記入させる。
  今日一日で,いちばんたのしかったこと,うれしかったこと,がまんできなかったこと,感心したこと,そのとき話せないでいたこと,先生にお話したい,聞いてもらいたいことなど。
4,めあての反省
  「毎月のめあて」を毎日反省させ,○×で自己評価させる。これをもとにして,毎月のめあてを反省させる。
児童手帳「梅の香り」は,児童に毎日記入,提出 させ,担任の検閲・指導を受けるようにした。

3.実践して
(1),父母の立場から
 学校の教育のめあてや方法,子どものゆめや生活のしかたがわかり,家庭内の対話が,より具体的になった。また,日記を通して,親と子が,わかり合えた。しかし,「めあて」の設定や「家の人のことば」等,負担を感じている。

(2),教師の立場から
 児童理解が,深まった。日記に書き込みをしてやることにより,児童とのラポート作りに役立った。問題傾向を持つ児童に対する指導に役立つ。しかし,検閲・指導する時間の確保が,困難。

(3),児童の立場から
 先生に,自分のことが,わかってもらえる。書き続けることに,喜びを感じる。生涯の記録・記念になる。しかし,たとえ,母親であっても,他人に自分の内面を知られたくないときがある。

4.おわりに
「梅の香り」の提案をしたときは,児童の非行という危機感から,容易に受け入れられ,実践化できた。
 数ケ月の後,はじめにあげた生徒指導部のねらいは,ある程度,解決された。事実,生徒指導部で特別指導をする例が,激減した。
 しかし,実践がすすむにつれて,当然のことであるが,児童手帳それ自体は,あくまでも,てだてであることが,わかってきた。この点,共通理解にあまさがあった。
 今後は,形式等にとらわれて,生徒指導本来の姿を見失うことのないように,教師,学級,学年の実態に応じた活用を図っていきたい。


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