福島県教育センター所報ふくしま No.60(S58/1983.02) -035/038page

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 <アイディア紹介>

自作テレビ用顕微鏡投影装置の工夫とその利用について

二本松市立二本松第三中学校教諭     

甲野藤 久 義

1.はじめに
 中学校における顕微鏡観察に関する教材は,1年から3年までを通して数多くあるが,これらの指導の中から次のような問題点が出ている。
 (1)1年初期の段階では,一度で検鏡の目標物を視野にとらえることが困難である生徒が多い。
 (2)動きのある検体では,スケッチをとおした説明や指示では動きに対応した理解がさせにくい。
 (3)生徒の自作プレパラートや教師の準備したプレパラートを学級の全員に見せたいときには,顕微鏡1台だけでは時間がかかりすぎる。
 以上の問題点を解決するには,明るさや大きさの点から見てもテレビ用顕微鏡投影装置の利用が最適と考えた。しかし,市販の装置は価格の点から購入が容易でないので,学校にある機器を利用してこれを組み立て,使ってみることにした。

2.装置のセットのしかた
 (1) 必要な機器
  カラーテレビカメラ(Fl.8,17.5〜105oズームレンズ付),モニターテレビ,顕微鏡投影器光源部分(昭和55年度まで理振法適用のもの),テレビカメラ用クローズアップレンズ(bQ) メカニカルステージ
図 組み立て方法

(3) 使用上の留意点
 1 顕微鏡の接眼レンズの光軸とカメラのレンズの光軸とを一直線になるようにする。
 2 接眼レンズとカメラのレンズの接続部分からは,外の光が中にはいらないようにする。
 3 カメラのしぼりは開放とし,顕微鏡側のしぼりで光量の調節をする。
 4 ピントの調整は顕微鏡の調整ねじで行う。
 5 カメラの色温度つまみを白色光側に回してカラー調整をする。
 6 モニターカメラは理科室内4か所にセットし,どの場所からでも見やすいようにする。

3.実践例
(1) 原形質流動の観察
  ムラサキツユクサのおしべの毛やダイコンの葉の毛を400倍でテレビに映すと,細抱が拡大され,直接顕微鏡で観察するより容易に原形質の流動を見ることができる。
(2) 血流の観察  キンギョの尾びれを100倍で見ると,動脈や静脈中の赤血球の流れがはっきりと映し出され,また,メカニカルステージにより少しずつずらし動かして見せると,尾の末端部分などで血流がUターンすることなどが容易にわかる。
(3) 火成岩の組織の観察
 カコウ岩やアンザン岩の組織を鉱物顕微鏡を使い,50倍で見ると,偏光を変えるごとに色が変わり,組織の様子をとらえることができる。

4.おわりに
(1)動きのある検体の説明は,テレビの画面上で示しながらでき,たいへん便利であるし,はじめに述べた問題点もほぼ解決できた。
(2)水中の微生物,細胞や組織のつくりなどで,生徒の自作プレパラートを映し出してやると,たいへん喜び,興味を示した。特に下位の生徒でも意欲的にプレパラートを作成し,観察した。
(3)スケッチもテレビの画面からさせることもでき,能率的であり,正確さも増す。
(4) 顕微鏡観察の基本は生徒個人が直接顕微鏡を操作して観察することと思うので,この方法だけに偏った指導にならないよう注意したい。
(5)今後は,倍率が高くないと見えない細菌類などについても見れるように工夫してみたい。


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