福島県教育センター所報ふくしま No.61(S58/1983.06) -005/042page

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小学校教材

社会科における地域素材の教材化

−第6学年の歴史学習を中心に−

教科教育部  菅 原 文 也

1. はじめに

 新しい学習指導要領による授業が始まってから小学校では3年間を経過した。移行措置の期間を入れるとすでに5年を経たことになる。
 この間,新しい学習指導要領の趣旨を生かした多くの研究と実践に触れることができた。しかし,その多くは,指導内容の研究と展開例が主で,児童の個性や能力開発に力点をおいた研究や実践は少なかったようである。
 そこで,児童の個性や能力開発を目指して,どのように教材開発をするか。第6学年の歴史学習をとおして,地域に求められる歴史上の人物と文化財を素材にした,教材開発の一例について述べてみたい。

2.第6学年の学習の改善の方向
 学習指導要領の改訂に当たり,教育課程審議会の答申に示された「社会」の改善の具体的事項では,第6学年の学習について次のように述べている。

(ウ) 高学年においては,中学校との関連にも配慮し,次のように改める。
 A 第6学年の歴史学習については,各時代についての歴史的な事項を網羅的に取り扱うことを改め,我が国の伝統を尊重する立場から,歴史上の人物の働きや文化遺産などを重点的に取り上げ,現在の自分たちの生活の歴史的な背景に関心をもたせ,歴史と伝統を大切にする心情を育てるようにする。  (略)

 また,このことをうけて,新学習指導要領内容(1) では,

 身近な地域や国土には,歴史的な遺跡その他の文化財が残っていることに気付かせ,自分たちの生活の歴史的背景に関心をもたせるようにする。

としている。これまでも,小学校の歴史学習の中で,郷土や国土に残る文化遺産を取り入れて,かなり重点的な取り扱いが行われてきた。しかし,その実践の多くは,「日本史を教えこむ」指導で,児童が自分にかかわりなく,史実をくわしく暗記させられた学習のようであった。

 新学習指導要領内容(1)では,歴史への関心がまず自分たちが現在住んでいる郷土からはじまることを示唆している。自分たちの身近な地域において目に触れることのできる文化財は数多い。これらに気付かせ.生活環境である郷土の歴史へ日を開かせていくことが,歴史に対する興味と関心を芽ばえさせてゆく力になるものと考える。

 また,歴史上の人物については,内容(2)の主文の終わりに,「歴史上の主な事象について,人物の働き……を中心に理解させる。」と示してあり,時代環境の中で活動した先人の営みについて理解させようとしている。結局は,自分たちの歴史的背景に対する興味や関心を深めさせようとするものである。この趣旨に沿った歴史上の人物もまた,自分たちの身近な地域から発掘できそうである。

3.地域素材の教材化
 地域には,教材となる素材が数多く存在している。本県においても同様であり,むしろ多いくらいである。しかし、それは多くの場合,素材であって教材ではない。教材としては,教材化への手続きを終了したものでなければならない。すなわち,学習指導要領に基づく指導に適した内容を含み,児童の発達段階や既有の経験からみて,それを扱うことによって教育効果が期待できる場合に,その素材は,教材化の対象と
第一図 地域素材の教材化の手順と関連


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