福島県教育センター所報ふくしま No.61(S58/1983.06) -008/042page

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小・中・高校教材

水の物性を調べる実験について

科学技術教育部  平 山   昇

1 はじめに

 物質の三態変化は,小学校,中学校,高等学校へと発展的に扱われている。すなわち,小学校では,水が温度によって,水蒸気や氷に変わることを理解させ,中学校では,物質固有の特性を表すものとして,融点や沸点を求めさせ,さらに,固体,液体,気体の密度の測定も行わせている。また,高等学校においては,物質の三態変化をエネルギーとの関連において,とらえさせている。これらを指導する素材として,中学校,高等学校では必ずしも水を扱ってはいない。

 しかし,水は最も身近かで日常生活とも極めて関連が深い物質であるので,生徒の理科への興味を喚起する上で,有意義な素材であると考えられる。そこで,水に関する実験を,小,中,高との関連において取りあげ,よりよい実験結果を得るための実験方法を検討した。

2 水の沸点を求める実験
 水の沸点を求める実験を行ってみると,沸点が100℃にならないことが多い。小学校では「水が沸騰すると,ある温度以上には温度があがらなくなること」をねらいとしているので,あえて100℃であることを示す必要はない。しかし,水の沸点が100℃であることは広く知られているので,実験を行った際に沸点が100℃にならない場合,このことに対して,疑問を持つ児童が多く見られる。そこであらかじめ,これらの原因を考察しておく必要がある。その原因としては,次の5つのことが考えられる。

(1) 温度計の器差
 温度計を数本,同じ条件で湯の中に入れてみると,示度が異なるものが見られる。これは,温度計には器差があるためである。従って,生徒に温度計を使用させる場合は,あらかじめ,標準温度計(又は0.1℃目盛の温度計)と比較して,器差の大きいものを除き,器差の少ないものを,使用させるようにする。沸点を測定するときの温度計の器差の確認は図3のような方法で行う。

(2)温度計の特性
 温度計は,中の液体(トルエンや水銀等)の高さまで,測定する液につけたときに,正しい温度を示すように作られている。したがって,下の図のような方法で実験すると,図1の場合は,温度計の球部ばかりが加熱されているが、水銀柱のところが空気にふれているので,示度は液温よりも低くなる。これを図3のようにすると,水銀柱の部分の温度は液温に近くなるので,示度も液温に近くなってくる。図2の場合は丸底フラスコの大きさによって示度が異ってくるが,水銀柱の部分が空気中に露出しているもの程,示度は低くなる。図1や図2の場合,温度計を,ガラスや厚紙の円筒で覆うと,示度が上昇する。

同一条件における測定結果の例

同一条件における測定結果の例(アルコール温度計使用)

測定条件 図1の場合 図2の場合 図3の場合
温  度 94.0℃ 96.8℃ 99.8℃
 

(3) 沸騰石の有無
 沸騰が連続的に起こっているときの液温が沸点であるが,きれいに洗浄したガラス器具の場合は沸騰が起こりにくく,液が沸点以上に過熱されることがある。この場合には,沸騰が断続的に起こって,そのたびごとに,温度が上下して定まらない。沸騰石を用いるとこのような現象は起こらない。

測定結果の例
(762mmHg)
測定条件 沸騰石有 沸騰石無
沸  点 100.0℃ 102.5℃


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