福島県教育センター所報ふくしま No.61(S58/1983.06) -009/042page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

(4) 大気圧と沸点
 沸点は大気圧によって変わるので,通常,大気圧が1気圧(760mmHg)のときの沸点をそれぞれの物質の沸点としている。したがって,大気圧が1気圧より低くければ,水の沸点は100℃より低くなる。すなわち水の沸点と大気庄の関係は,下記の式で示されており,この式を利用して,大気圧が740oHg
  沸点={100+0.03686(Po一760)}
のときの沸点を求めてみると99.3℃となり,100℃に達しない。

(5)水の純度と沸点
 水に不揮発性の物質が溶解すると,沸点が上昇する。従って,水の沸点測定には,できるだけ純度の高い水を用いた方がよい。溶液の沸点測定は,中学校(組物質と混合物の区別)や高等学校(分子量測定)でも扱われているが,いずれも,純物質と対応させているので,純水の沸点測定は,これらの基礎として重要である。

3 水の凝固点の測定
 小学校では,試験管に水を入れ,これを寒剤で冷却させることによって「水が凍るとき,凍り終わるまで,温度が一定である」ことを理解させている。中学校や高等学校でも,寒剤を利用して,純水や溶液の凝固点を求めさせている。この方法で,より正確な凝固点を求めるには,次のことに留意する必要がある。

(1) 寒剤の温度
 試験管の中の水の量が少なく,寒剤の温度がひく過ぎると,水と氷が共存する時間が短く,温度が急に下降するので,温度と状態変化の関係がとらえにくく,凝固点も求めにくくなる。このような場合は,寒剤の温度を調節し,さらに,試験管に入れる水の量を増やして,ゆっくり凝固させるようにすると良い結果が得られる。また,凝固点降下法によって分子量を求める場合は,二重管にするとより正確な凝固点を求めることができる。

(2) 実験誤差について
 温度計の使い方や器差によって誤差が生じるのは,沸点の場合と同じである。すなわち,水の凝固点を正確に測定するには,温度計を0℃目盛のところまで,被験物質に浸さなければならない。温度計の球部だけを被験物質に入れて測定すると温度計の示度は実際の温度より高くなる。

 測定結果の例
温度計 球部だけで測定 0℃目盛まで入れて測定
No.1 1.4℃ 0.3℃
No.2 1.0℃ 0.0℃

4 氷の密度の測定
 中学校では,金属等の密度を実験によって求めさせている。また,小学校では「水は凍ると体積が増加する」ことを実験でも確かめさせている。ここではこれらの発展として,氷の密度を測定する方法を検討した。金属等と同様の方法で氷の密度を求めようとすると,氷の体積測定中に氷が融けて,測定の誤差が大きくなる。そこで,装置と実験方法を次のように工夫すると,文献値に近い結果を得ることができる。

(1)実験方法
実験器具

1 200ml(ミリリットル)のメスシリンダーを,半円筒状にくりぬいた二枚の発泡スチロールで覆い,継ぎ目をガムテープ等でとめる。次に片方の発泡スチロールを,メスシリンダーの目盛が読みとれるように,150ml(ミリリットル)の目盛あたりまで,長方形に切り取る。
 ※発泡スチロールを半円筒状にくりぬくには,800W位のニクロム線をのばした後,半円筒状に形をつくり,電気を通して加熱し,発泡スチロールを融解して切り取る。ただし,メスシリンダーの底の部分は,加熱したガラス棒等でえぐる。
 2 次に,このメスシリンダーに水と氷を入れて,水と容器の温度を0℃近くまで冷却する。冷却後,氷を除き,水の体積を読み取った後,秤量して全質量を求める。
 3 0℃の氷の表面の水をガーゼ等でふきとりすばやくメスシリンダーに入れ,細いポリスチレン棒で押して氷を水中に沈め,体積を測定した後,再び全体を秤量する。

(2) 実験結果
実験回数 氷の体積 氷の質量 密  度
1 53ml 48,6g O.917g/ml


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。