福島県教育センター所報ふくしま No.61(S58/1983.06) -011/042page

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教科外教育

実践力を育てる学校行事

経営研究部  小 林 正 守

1 はじめに

 学校行事の目標は,学校生活に秩序と変化を与える集団活動によって,児童生徒の健全な発達を図り,合わせて学校生活の充実発展に資することである。その教育的効果については,児童生徒の側からも多くの実例が示されている。例えば,毎年の卒業にあたって計画される文集や卒業式の答辞等で,在学中最も心に残り感動したものとして,修学旅行や登山,文化祭など学校行事に関することをあげてその思い出を述べ,父母や地域社会の人々に感動と共感を与えている事実ははとんどの学校でみられるところである。

 一方,教師にとってみても,学校行事を体験した後の学級集団が行事以前に比べ数段のまとまりが生まれ,学級づくりにプラスしたことなどは,よく経験している。これは学校行事を通して,仲間と相互に協調し,理解を深めあう過程で,お互の良さを発見したりした経験が,それぞれプラスに作用した結果と考えられる。

 しかし反面,「行事に追われて落ちついた学習指導ができない」という教師の声があったり,運動会や学芸会など特殊な行事の練習量と準備時間の過多とその後遺症に悩まされている児童生徒がいることもまた事実である。
 以下これら学校行事に内在する教育的効果との諸問題とをふまえた上で,「ゆとりと充実」を目指す教育課程のもとで,ある意味ではその趣旨が集約的に具現されると思われる学校行事の指導について,児童生徒の実践力を高めるという視点から考察する。

2 学校行事の特質と期待される実践力

 学校行事は,その意義を十分に理解し,ねらいや特質に即した具体的な指導計画のもとに,児童生徒の積極的な参加によりその成果を期待することができるが,その特質は次のようなものと考えられる。
 (1) 学校生活に秩序と変化を与え,生活の転機と なる機会をもった活動である。
 (2) 他の教育活動を総合発展させる機能を担って おり,集団的実践活動を通した望ましい集団の育成に寄与する活動である。
 (3) 児童生徒に感動を与えたり,創意工夫を生かす機会の多い活動である。

 それぞれの行事において,ねらいをおさえ,特質が発揮されるよう計画され,実施されるならば,次のような実践への結びつきが期待されるであろう。
 (1)これまで経験しなかった新しい活動の良さ, 集団生活のねうちを感じとり,その強い印象や 刺激が,児童(生徒)活動や他の学校生活への 実践意欲をいだかせる。
 (2)教科・道徳・特別活動で学んだり,日常生活の中で体験し習得した知識や技能を,学校行事の中で総合的・発展的に生かし実践することによってさらに実践力が高まってくる。
 (3) 学級をこえた学年・学校という大集団の同一目標に向かった活動を通して,集団に対する所属感・連帯感が高まり,実践力が高まってくる。
 (4) 主として反復練習や習慣化をねらった訓練的行事を行うことで,その実践が身についていく。

3 指導にあたる教師の基本的態度

 このような特質をもち,実践力が期待されている学校行事であっても,児童生徒の管理が最優先するような計画実践では,まったく意味のないものになってしまう。児童生徒にどのように積極的にとり組ませ,所期の目的を達成させていくかは,ひとえに指導のあり方にかかっているといえよう。
 以下,そのための教師の基本的態度について考えてみた。


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