福島県教育センター所報ふくしま No.61(S58/1983.06) -012/042page
(1)人間的なふれあいを基盤として
人間的なふれあいは,二人以上の人間の間でお互に人間的弱さを自覚し,それを共に克服していく努力の過程を経験し合う中から生れるものである。したがって,師⇔弟という上・下の関係が基底である教科の指導場面からはなかなか生まれにくいといわれている。(坂本昇一 千葉大学教授)学校行事においては,教師と児童生徒とが同一の目的に向かってハダカで接し合うことが多いので,本当の意味での人間的なふれあいが生まれやすい。
教師の豊かな人間性を基盤とした集団の暖いふん囲気の中で,真剣に活動する厳しい姿勢を通して,真の人間的なふれあいが生まれ,そのことによって児童生徒の実践力も高まってくる。(2) 児童先徒の希望や創意をできるだけ生かす
学校行事の中には,児童生徒が自発的に活動する余地が広いものが多く,またそれを期待されてもいる。したがってこのような行事の実施にあたっては,計画・準備の段階から児童生徒の希望をできるだけとり入れていくことが大切である。その際,児童生徒の個々の希望を無制限にとり入れるのではなく,それらを行事のねらいに即した目標達成のために努力しようとする意識までに昇華させることが大切になってくる。
自分達の希望がとり入れられた行事に積極的に参加し,楽しく豊かな経験を積むことによって,児童生徒の実践力もいっそう高まってくる。(3)事前・事後の指導を重視する
学校行事を実施する場合事前の指導が徹底しないと行事の意義やねらい,方法等が不明瞭なまま実施されてしまうので,いわゆる「やらされる行事」になってしまい,児童生徒の実践力は育たない。また,事後の指導があいまいな場合は,何のために苦労したのか,次回はどう改善し,どこを充実させればよいかなどが明らかにされないため児童生徒の活動意欲そのものまで減退させてしまう。したがって,学校行事を充実させ,児童生徒の実践意欲を喚起させるためには,事前,事後の指導の時間を意図的に設定することが大切である。その際,学級会活動の時間等をこれに充てることは,学級会活動本来の趣旨から言っても好ましいことではないので,学校行事の時間として位置づけるべきである。4 実践力を高める学校行事の例
(1)グループ見学を取り入れた修学旅行
中学校における鎌倉方面への修学旅行で,鎌倉の自然や文化財を6〜7名のグループで自由見学する試みである。見学場所やコースも生徒が事前に研究して選択する。歴史や文化を読みとらせ,「わかる」という中身をたしかなものにするには生徒の主体的なとり組みと生徒なりの課題意識なしにはむずかしい。しかしこの場合は見学場所や文化財について,一人一ケ所以上はグループ全員に説明するよう計画させることによって,調査や理解が主体的になされることになる。
不測の事故も心配されないわけではないが,事前指導と現場での細心の注意により,解決できるものであり,グループでの未知なるものの発見の喜びは,何ものにも換えがたいといえる。(2) 児童会の活動を主体とした運動会
この運動会は,児童会が主体的に企画し,組織的に運営し,自治的・自発的に活動を展開した事例である。
司会,進行は原稿で練習した児童の担当であり,来賓の受付,接待も小学生らしいさわやかさで受けもつ。ただし児童の安全確保については,教師が責任をもって決める。
入場行進は,地区別行進にする。「交通事故ゼロの駅前地区」とか「四月からひとりの遅刻者もいない○○地区」など各地区のPRを書いたプラカードを先頭にしての入場である。競技の勝負は知恵,体力,偶然及びチームワークで決まる種目を用意し,個人,学級対抗とする。これらは運動会に消極的な児童も一日を楽しく過ごせるための工夫である。5 実践力を培う学校行事の実践例
−生徒の意志発表を取り入れた終業式−
終業式は,生徒が学期又は学年の終りに学校生活をふり返る行事であるが,生徒自身が参加する余地のない儀式に終わりやすく,生徒がなし得た喜びや