福島県教育センター所報ふくしま No.61(S58/1983.06) -025/042page

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<アイディア紹介>

身近な素材の教材化を求めて

   −゛サケ"の観察を通して−

相馬郡小高町立金房小学校 教諭 高橋 清

1 はじめに
 小高町は南に泉田川,北に新田川と県内でも有数の“サケ川”とよばれている川にはさまれている。秋になると銀色のうろこをおどらせながら遡上(そじょう)するサケや捕獲する様子を見ているため,サケは比較的身近に感じる魚である。

 しかし,親サケが川を上ってくることはわかっているが,地元でふ化させ,稚魚を育てて放流していることを知らない子どもは以外と多くいる。
 そこで,サケのふ化から稚魚を観察させることを試みてみた。

2 飼育観察教材としての要件
 5年「魚の育ちかた」では,一般的にメダカ,熱帯魚,ヒメダカなどがあつかわれているが,卵,稚魚とも小さすぎて観察しにくいため,観察意欲が持続しにくいなどの問頴かある。地域を見直すことにより,子どもに密着した教材の掘り起しが大切である。飼育観察では地域の特徴を生かしたいと考える。
(1)飼育観察教材の要件
  1 ねらい達成が可能である。
  2 子どもにとって飼育が容易である。
  3 成長過程の特徴的な変化が容易にわかる。
  4 子どもが意欲を持続して取り組める。
  5 他の単元,教料との関連性が深い。
  などが考えられる。しかし,身近な素材の教材化においてすべての要件を充足することはむずかしい。子どもの実態や教師のねらいの関連において,指導の重点をどこにおくのか,どんな子どもの姿を願うのかを考慮して教材化を図ることが大切になろう。

(2)サケをとりあげたことについて
 観察・飼育教材としての要件をすべてそなえているとは言えないが,以下のことからとりあげてみた。
  1 子どもにとって地域の魚ということで関心はあるが.稚魚期についてはわかっていない。
  2 親ザケになっても回帰など,ナゾが多く,意欲づけのための話題が多い。
  3 魚体が大きいため,卵→ふ化一稚魚の変化の様子を容易に観察できる。
  4 子どもにとって飼育が簡単である。
  5 ねらい達成が可能である。
  6 成長がはやい上,その期によりはっきりした変化を示すため,観察意欲が長続きする。

(3)サケを飼育するには
 サケの飼育には,水と水温の管理が大切である。きれいな水を特に好む魚であるため,水の汚れは極度にきらい、えら病”にかかりやすい。また,塩素分を含んだ水も適さないので水道水ほさけたいが,日光に数日さらした水ならさしつかえない。私の場合,川の水を使用し,週2回水の交換をした。水温は10℃以下が適当であるといわれるが15〜18℃ぐらいまでさしつかえない。その他,水槽の大きさと匹数の関係(40c冊×25c払で30匹前後)エアポンプ使用を考慮すること。

3 実践して
(1)観察がしやすい
 卵の中に“黒い点、を見つけて,観察を続けるうちに目であることがわかり,自が一番はやく形づくられることに気づいた。また,卵の中でかすかに動く心臓を見つけたり,卵黄をだいて泳ぐサケに疑問をもったりなど,自分の目で確認できた。

(2)観察への意欲
 「先生,サケにあいさつしてきたよ」,「今日は観察するんだ」と子どもを引きつけてくれる。これは,成長過程でその期の特徴をはっきり示してくれるので,次の変化への好奇心をかきたててくれるからだろう。

(3)小動物の生命の尊重
  サケが“えら病、にかかったとき,子どもたちは,川まで水をくみに行き看病した。サケの生命を守るなどの飼育を体験し,他の生物の生命も尊重すべきことを学んできた。

4 おわりにあたって
 はじめてサケを甲育して,私も子どもたちも感動の連続であった。放流の時は,別れを惜み涙ぐむ子どもの姿に胸がつまった。子どもたちの自然を見る目は素直である。子どもの探究Jむを促すことができる教材の工夫をとおして,地域性を見なおしていきたいものである。


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