福島県教育センター所報ふくしま No.62(S58/1983.08) -002/038page

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小学校教材

体育科「教材研究」の視点

教科教育部  石 田   威

はじめに
 教材とは,一般的に教育の素材ともいわれるが,一定の教育目標を達成するために,教育の内容,経験を構成したもの,あるいは,学習に適するように再編成したものである。教材研究は,学習者のために,一定の教育日標に照らして,素材を教材化するための手続きである。―新版現代学校体育大事典―

 これまで見受けられる教材研究は,ともすると,素材の構成や再編成にとどまりがちである。このことは.技能中心の学習指導になりやすい欠点があった。教材研究は,素材の構成や再編成を通して「何を,どう教えるか」について研究をすることが主であるが,「何のために,誰に,どのように,教えた結果の見通しは」ということを抜きに,「何を,どう教えるか」について十分な研究を行うことは,不可能であろう。

 ここでは,教材研究を進めるに当たって必要な6つの視点を示し,必要に応じて低学年「基本の運動」を通して,その要点を述べることにする。

1.教科の目標に関すること
 教材研究の第1は,教科の目標を十分に理解することである。体育の目標は,学習指導要領に「教科目標」及び「各学年の目標」が示されているので,これを認識し,学習指導の方向を適切に把握しておくことが重要である。(学年目標は,第1学年,「基本の運動」について触れる。)

(1) 教科の目標
 体育科の目標は,次のように示されている。

 適切な運動の経験を通して運動に親しませるとともに,身近な生活における健康・安全について理解させ,健康の増進及び体力の向上を図り,楽しく明るい生活を営む態度を育てる。

 教科の目標を次のように分析し,理解を深めることにより,学習指導の方向が明確になる。

1 目標に近づくための方法
ア,「適切な運動の経験」:児童の心身の発達や運動の特性との関連を考慮して,体の発達刺激として,また,運動技能や体力の向上の観点から望ましい運動を選び,運動量,質,系統性などを考慮して行わせる。
イ,「運動に親しませる」:適切な運動の経験を通して児童に運動の楽しさを十分に味わわせ,日常生活はもちろん,生涯を通じて児童が自ら進んで積極的に運動を実践することができるようにする。

2 学習指導の結果,児童に成就させるもの
ア,「健康の増進」:運動領域の学習を通して体力を養い,暑さ,寒さに対する抵抗力を高めたり激しい運動に堪えられるような健康な心身の育成を図る。
イ,「体力の向上」:調和のとれた体力(調整力,筋力,持久力など)を養う。ここでは,各種の運動の基礎的な技能を身につけることも目指す。
ウ,「楽しく明るい生活を営む態度を育てる」運動の仕方を身につけさせ,運動の楽しさを体得させ,体力を向上させ生涯にわたって運動に親しみ,健康で活力に満ちた明るい生活が営めるようにする。

(2) 学年の目標
学年の目標は,教科の目標を受けて学年別に達成させたい具体的な目標である。低学年(第1,第2学年)の目標は,次のように示されている。

(1) 各種の基本の運動及びゲームを楽しくできるようにし,体力を養う。
(2) だれとでも仲よくし,健康・安全に留意して運動する態度を育てる。

 学年の目標を次のように分析し,理解を深めることにより,学習指導の方向が具体化される。
1 「楽しくできるようにし」:基本の運動の経験を通して各種の運動の基礎となるよい動きができるようにする。
2 「体力を養う」:低学年児童においても,筋力,持久力の発達がみられるので体力として扱う。


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