福島県教育センター所報ふくしま No.62(S58/1983.08) -004/038page

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深めることである。体育の学習は,人間個体の総合的な機能が関与して行われるものであり,人間個体は,生涯にわたって発達を続けることを理解しておくことが必要である。
 人間個体の発達は,一定の順序ある過程をたどって連続的に進行するが,すべての個体が,一様に,同じ速度で発達するわけではない。また,発達の程度にも差がある。低学年児童の発達の特性を理解するためには,発達の速度や程度の個人差及び発達の連続性を考慮して,幼児期及び児童期の発達の特性についてとらえておくことが大切である。

 幼児期における運動機能の発達は,身体の発育や精神の発達との相関が大きく,年齢が低いほどその相関は大きい。これは,運動機能の発達によって生活空間が拡大され,生活経験を通して知的,情緒的社会的発達を促進させているためである。このような発達過程の中でしだいに人格を形成していくのであるが,その基礎になるのが,身体的発育であり,運動機能の発達なのである。
 この時期の運動機能の発達の特性は,歩行の完成を基礎として走る,跳ぶ,投げる,ぶらさがる,よじのぼる,物を持ち上げるなどの大筋群の運動機能がかなり発達し,同時に手先や手腕の運動の速さ,正確さ,協応動作などが発達する。

 児童期は,幼児期に比して発達速度がゆるやかであり,幼児期までにほぼ出そろった基本的な運動機能を定着させ,学校教育の場や日常の遊びの中でしだいにみがかれ,程度を高めていく時期である。また,この時期は,自己の意志のままに,自由に運動するために必要な機能の形成がみられ,種々の遊びや経験を通して運動能力が発達していく時期でもある。以上のような発達の特性を,前述の 2 −(2)−3との関連でとらえることにより,基本の運動の効果的な指導が容易になるものと思われる。

4.学習指導方法に関すること
 教材研究の第4の視点は,学習指導方法について精通することである。体育の学習指導方法をどのように工夫し,指導効果をあげるかは,学習指導の目標との関係で考えることが基本的に重要なことである。運動領域の内容は,児童の心身の発達に応じて課題にできるような運動で構成しているので,児童の主体的な学習が生じやすくなっている。体育の学習指導方法については,特に,主体的学習,問題解決学習,集団及び小集団学習,個別学習などについて認識を深めておくことが必要である。また,学習方法の習得を含め学習訓練を低学年の指導から身につけさせるための方法を講ずることも大切である。

5.基本の運動(運動領域)の指導に関すること
 教材研究の第5の視点は,運動領域及び内容の指導についての工夫である。基本の運動の指導に関して工夫すべき点は,単に児童を動かすことではなくそれぞれの運動の中に含まれている課題く前述の 2 −(2)−2>を明確にして学習させることである。
 低学年の「走・走・跳の運動」についてみると,「歩の運動」は,幼児期までにほぼ完成している運動機能であるところから,この運動に対する欲求や興味はあまり期待できない。したがって,運動の組み合わせや場の設定,課題への興味づけが指導のポイントになろう。「走・跳の運動」は,児童期においても発達を続ける運動であるため,欲求や興味の程度は大きい。この運動の指導に際しては,課題と場の設定が一致するように工夫し,児童が自ら積極的に,全力で行うことを課題意識としてもたせていくことが重要である。また,助走,踏み切り,着地などを通してのリズム感や深部感覚を養うなどの配慮も必要であろう。

6.評価に関すること
 教材研究の第6の視点は,評価について認識を深め,評価の機能を十分に活用することである。
 評価のねらいは,学習指導によって児童がどのように変容し,どの程度定着したかを目標に照らして明らかにするとともに,児童自身が自己評価や相互評価によって自己の特性や進歩の程度を知り,自覚をもって学習に取り組むことができるようにすることである。そのためには,教科目標,学年の目標,運動領域内容のねらい等に基づいて,評価の観点を明確にした評価計画を作成することが必要である。

 お わ り に
 体育科「教材研究」について,以上の6つの視点をあげて述べてきたが,これらの視点に軽重はない。6つの視点がよく調和され,学習指導が展開されることにより,学習指導の成果として教師も児童も実感できる結果が生ずることを銘記したい。

〔主な参考文献〕
 小学校指導書 (体育編) 文 部 省
 発達心理学(田中 敬二 編著)日本文化科学社


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