福島県教育センター所報ふくしま No.62(S58/1983.08) -012/038page

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交叉的交流は有効である。
図4交叉的交流
1(丸囲み)「先生,ソフトしない?」
(無邪気に)
2(丸囲み)「来週から期末テストだろう 勉強しなさい」
(厳しく)
(3)裏面的交流
 表面上の言語表現の裏側に,無言のうちに,態度や行動,あるいは声の調子や表情などで別な意味のメッセージが伝達されている場合の交流を裏面的交流(図5.6)という。

図5裏面的交流
1(丸囲み)「今,何時ですか」(ニヤッと笑って)(1’(丸囲み)「お前の時計はいつも狂っているのだろ,バカ」)2(丸囲み)「8時です,ちょうど,合わせたばかりです」(自信ありげに)(2’(丸囲み)「アッハッハー,狂ってなんかいないぞ!」)

 図5の交流を見ると,表面上はXさんとYさんは相補的交流のように見えるが,裏面的には別の意味の交流がある。そのため.なんとなく不快な感じがし,いつか,裏面的交流が表面化し,対人関係がこじれてしまうことが多い。

図6裏面的交流
1(丸囲み)「ここのところ教えて下さい」(ニヤッとして)1'(丸囲み)「わかるかな−」)「いいとも,どれどれ」(いやな顔をして)(2(丸囲み)「バカー おれは忙がしいんだ!」)

 3.よりよい交流をするためには
図7よりよい交流
1(丸囲み)「宿題,忘れたのですか」
     (冷静に)
2(丸囲み) 「だって,忙がしかったのです」
      (甘え口調で)
3(丸囲み) 「そう,忙がしかったの」
      (やさしく)その後
4(丸囲み)「どうしていつも忘れるのですか」(冷静に)
 図7のように,交流が交叉した場合は,まず,相手の反応に対して,相補的に受け入れ,それから,必要な交流に切り変えていく。
 又,交流場面で,相手から隠されたメッセージがある時は,それを受け入れる。自分に対しては半ば無意識的に発信している無言の交流に気づきそれを修正していく必要がある。

4.事 例
 チック症状を呈する高校生(1年, 男子)とその母親の交流のう分析について
子供‥つめかみ,チック,母との会話が少なく,時には暴言をはく
母親…養育態度は拒否的,厳格.期待過剰

子供と母親の日常会話の例
{子供「ただいま−,腹へったな−」(甘え口調)
母親「何言ってるの」(感情的に)}

{子供「小遣くれよ−」(甘え口調に)
母親「この前あげたばかりよ!」(感情的に)}

図8交流事例

 以上の母子の会話を分析してみると図8のように,子供は常に母親のPに対して働きかけ甘えているのに,母親は甘えさせず自分のCから子供のCに返す交叉的交流になっている。そのため子供はこの後,暴言をはき母との交流を中断する。このような交流も問題行動の原因の一つとなると考えられる。そこで母親に対しカウンセリングを通し交流をP−Cに改善 させた。その結果,暴言もなくなり,チック,つめかみも少なくなってきた。

5.おわりに
 交流の分析は,気持ちの通じ合うコミュニケーションをし,よりよい人間関係をつくるための基礎になるもので,教育相談場面だけでなく,日常の生活の中で大いに活用してほしいものである。

 参考文献
自己実現への道     M・ジェイムス他
エゴグラム     デュセイ
第47回TAセミナー資料     国谷誠朗


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