福島県教育センター所報ふくしま No.62(S58/1983.08) -014/038page
2.問題行動児童の家庭の養育態度
問題行動のある児童については,その一因が家庭の養育態度にあるのではないかと思われる。この点について,山形県教育センター研究報告書第23号の研究例より考察してみよう。
図4 養育態度
問題行動児のうち「不適切な養育態度」の影響を受けているものが72.1%である。内訳は「放任」が最も多くて58.6%,次に「一貫性なし」「過干渉」「厳格」となる。ここでいう「厳格」とは理不尽で非常識的厳格を指す。これから見ると家族の人間関係のゆがみを反映しているものと思われる。次に養育態度と性格・行動の問題との問にどのような関連があるかを探るために, 養育態度上の問題の有無に分け,両者を比べてみると全般的に“養育態度に問題ある家庭の児童”は“ 間題ない家庭の児童”より性格・行動に問題が見られ 特に「うそが多い」「衝動性が強い」が4倍「落ち着きなし」が2倍多い。
図5 養育態度と性格・行動
つまり養育態度が児童の性格・行動の形成に大きな影響を及ぼし問題行動の潜在要因となっていることがうかがわれる。 このような教育機能の低下した家庭で育てられた児童生徒が,各学校に,各学年に,各学級に何人か含まれていると見た場合,学校における問題行動への対策ひいては生徒指導の充実推進を図るためには学校と家庭が緊密な連携を進めなければならない。3.連携のための留意点
効果的な連携を確立するためには,まず教師が日頃より家庭に働きかける姿勢が肝要である。そのための主な留意点を列記してみよう。
(1) 印刷資料は,父兄の声を盛り込み,内容充実を図ると共に,確実に家庭に届き読まれるような配布方法.例えば感想,意見,要望等が学校へ返ってくるよう方法などを工夫するのもよい。
(2) PTAや保護者懇談会等で理解を深め合う場合は,学校の一方的な説明や単なる形式的話し合いだけでなく,保護者のくつろいだふん囲気での自由な発言や意見交換の場を用意したり,外部講師による講演や映画・ビデオ等の視聴覚機器の活用を図るのも効果的であろう。
(3) 学校と家庭の連携上,家庭訪問は有力な方法であるが,問題行動の生徒指導にかかわる訪問などの場合にもゆるぎない信穎関係が確立されていることが望ましい。そのためには日頃より相互の理解を深めていく必要があるだろう。
(4) 保護者に個別的来校を要請する場合などは.事前連絡で要請の主旨を明確に伝え,誤解や不安を招かないよう細心の注意を払いたい。
(5)自主来談は学校教育相談の理想であり,随時保護者が自発的に来校できるよう相互信頼を深めておくことが大切であろう。
(6)電話や書面での連絡は,あくまでも補助的手段であり,それだけで事足りるとする安易な考えは避けなければならない。4.児童生徒に特別な指導を要する家庭との連携問題行動やそのおそれのある児童生徒の保護者はともすると,学校の指導方針に対する理解や協力が不十分な場合があるので,その理解を図りながら家庭の教育機能を助長するためには次のことに留意することが大切である。
(1) 無理解,非協力の要因を探り,これに対応することも大切であるが,問題行動等が発生してからの理解や協力の要請ではなく,日頃からの連携がより大切であろう。
(2) 指導的配慮に欠けた制裁的.懲罰的な措置は保護者の態度を一層硬化させるおそれがあるので厳に慎まなければならない。
(3)望ましい援助指導が困難な場合は.関係諸機関を紹介し,専門的援助を求めることも大切である