福島県教育センター所報ふくしま No.62(S58/1983.08) -015/038page

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受講者の感想
    

真の生徒理解に基づいた生徒指導の実践をめざして

只見町立朝日中学校 教諭 近 野 元 洋

≪はじめに≫
 青少年の加速度的に増加している窃盗や暴力行為‥‥‥等,いわゆる非行が大きな社会問題化している昨今,日々,学校教育の最先端で生徒に接している私たちは.このような憂うべき状況の原因・経過などをどう受け止め,どのような指導方策を考えたらよいのたろうか。このような迷いや思案が錯そうする折,昭和57年度の教育センター「中・高生徒指導講座」を受講する機会を得,意義深い研修を積むことができた。本校としても,生徒指導の意義や目的が単に非行対策にのみあるのではないということを十分理解しながら.学校教育における生徒指導の充実強化が進められているときに,前後期述ベ7日間にわたる研修は,私にとって考えをあらたにするものがあった。

≪講義≫
 私は講義を受けて,教師のあるべき姿,生徒とのかかわり方について大きな示唆をいだいた。日頃私たちが生徒を指導する中で,感情的になったり,威圧的になって進めがちな生徒指導に対して,所員松本先生の「生徒理解の理論と方法」を聴講し,生徒指導における人間的触れ合いを重視した指導の重要性や基本的な生徒理解の方法についての内容は私たちも常にこうあらねばならないと痛感した。また鴫原先生の豊かな経験と実践に基づく「生徒指導とカウンセリング」の講義と演習では.生徒の心的内面にせまる教育相談やカウンセリングの進め方について具体的に教授いただき日頃の指導に多くの活力を与えていただいた。

 更に,県警本部防犯少年課・宮本氏が「ヤングテレホンコーナーの少年少女たち」の講義の中で述べていた「子供の心をその姿や言動のみで短絡的にとらえないで,子供の迷いや悩み,問題行動などが何に起因しているのか,その真意を把握して対処してほしい。そのことなしには,子供の心を正しく導くこともできないし,願いに応えることもできない。」という説話は,私の脳裏に鮮明に焼きついている。

 評論家・北沢氏の「学校における性教育の課題と対策」では性教育に対する新しい視点の示唆を受けた。 聴講を終えての所感として,望ましい生徒指導の根底にあるものは生徒理解であり.理解の深さが指導の探さにつながるものであるということを強く感じた。

 日常の学校生活においても,さりげない生徒との触れ合いの中で生徒を理解し,援助する場と機会があり,教師自身これに目を向けなければならないと思った。そして,反省させられることは,私にとってこれまでの指導が生徒の心的内面にせまる指導であったかということであり,今後の生徒指導に対する考えを新たにしたものである。

≪研究協議≫
 研究協議においては,「問題行動の早期発見とその指導」「生徒指導における共通理解と指導体制」「当面する生徒指導上の問題点」などの協議を通して,他校の状況や指導への対応,あるいは他の地域での問題傾向やその指導などを把握することができた。そして,いろいろな問題に直面している学校現場にあっても,今後の生徒指導に向けての取り組みをいっそう充実させなければならないという意欲を喚起する良い機会となった。しかし,一面においては各校より持ち寄られた資料の中に見い出せる実態や問題点.あるいは協議に出された話題には.生徒の心的内面をどれだけとらえて指導が行われたかについてもっと詳細に知りたい部分もあったように思われる。

≪おわりに≫
 この講座を受講して,私たち教師は「教育評論家」ではなく,「教育実践家」でなければならないということをあらためて認識させられた。

 日頃実践している生徒指導についても,生徒の真の姿をどれだけとらえて計画一実践してきたか反省させられるものがあった。

 一人一人の生徒の個性と能力を認め,教師と生徒の信頼関係を基盤とした心の触れ合いの中にこそ真の生徒指導の姿があるのではないかと考える。そして,このような触れ合いがあってこそ生徒たちも生き生きと活動し,教科を通しての生徒指導や道徳・特別活動を通しての生徒指導も確立されるものと思われる。


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