福島県教育センター所報ふくしま No.62(S58/1983.08) -016/038page

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教育センター新刊図書・資料紹介

その2 定期刊行物の紹介

経営研究郎 松 浦 正 直

 はじめに.
 当教育センターで収集している定期刊行物は,所報ふくしま57号で紹介したように教育関係誌・官公庁機関誌など80余種類におよんでいる。これらの刊行物は教育関係資料分類基準に従って分類し,図書資料閲覧室に展示し利用に供している。また,旧刊行物は種別ごとに製本し,必要に応じていつでも利用できるように書庫に配架してある。本号では,定期刊行物の資料性について紹介し参考に供したい。

1.定期刊行物の資料性
 一般に定期刊行物は,単行図書に比べ最新型の情報記事を提供してくれる。教育,経済,産業,政治,科学,技術について, 図書では論じられていない多くの主題が適切に扱われ, 領域どとにまとまった小論文形式のものが多く利用価値が高い。また,調査については項目ごとにその状態や意見を見取図やグラフで提示し,比較検討できるように遂次収録してあるなど,定期刊行物はきわめて貴重な文献資料といえる。

 教育研究を行う場合「資料収集は研究の生命線であり,資料の活用の適不適が研究の成果を左右する」といわれている。一つの研究において,どんな資料が必要であり,どんな資料が有効であるかは,研究の目標,すなわち,その研究で何を明らかにしようとするのかによって決定されてくるものである。しかし,教育現場においては,せっかく研究テーマを設定し,研究目標を立てても,必要な資料や有効な資料は具体的には何なのか,うでをこまねき苦慮しているのが現実ではないだろうか。そのようなときに,定期刊行物はそれぞれの領域において研究を指向する資料の提供をしてくれるのである。

2.調査研究を主とした定期刊行物の−例
 最近の教育研究で多いのは,生徒指導に関する主題である。それらの研究には必ず生徒を王体とした実態調査が伴う。調査は客観的資料であることが望まれるだけに,その項目の設定の仕方が重要になってくる。どのような調査の仕方が適切か,生徒指導を中心に調査研究をすすめている定期刊行物の一例を紹介してみよう。

 「モノグラフ・中学生の世界」は,教育の基盤は生徒理解にあるとし,次のような趣旨で研究が行わわている。“分かりやすく力がつく教材をつくるためにも,またよい指導,役立つ教育相談をするためにも,「中学生を正しく理解する」ことが何よりも大切である。そのためには,正しい調査法による継続的かつ広範囲な調査が必要である。”とし,著名な教育研究者が中学生の意識調査を行ったレポートであり,教育研究全領域に関連する文献資料である。現在,バックナンバー14号まで発刊されている。その調査主題は次のとおりである。

 1 学校生活の楽しさに関する考察
 2 中学生の余暇    3 中学生の母親の意識
 4 非行文化をめぐって
 5 学業不振とその背景
 6 交換日記一中学生のサブカルチャー
 7 中学教師の生活と意見
 8 女子中学生−その心の傾斜−
 9 生徒がみた中学教師
10 中学生の父親一新しい父親像の誕生一
11 高校進学一揺れ動く生徒の心一
12 中学生の自己像
    −スモール、イズ ビューティフルー
13 中学生の生活経験 14 中学生の部活動

 各刊どとに細部にわたって意識調査を行いその結果の分析と考察が述べてある。「中学生の自己像」についてみると,学業不振,校内暴力, 家庭内暴力などの非行の禍の中にあって,甘え,モラトリアム傾向,三無主義などが指摘される中学生が,自分自身をどう認識し,どのような将来展望をもっているかなど,いろいろな角度から22項目について調査分析しまとめたものである。“21世紀に生きる中学生日本の明日を担う中学生の指導に,いま何が必要が”を考えさせられる文献である。活用に供したい。

 おわりに
 定期刊行物の記事の多くは,シリーズものとして情報(資料)を提供している。記事索引や資料ノートを作成し,遂次収録しておけばその体系も明らかになり,資料検索も容易になるので試みをおすすめしたい。


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