福島県教育センター所報ふくしま No.62(S58/1983.08) -017/038page

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研 究 報 告

昭和57年度教育研究法講座

○小学校国語科入門期の作文力を伸ばす指導

二本松市立安達太良小学校教諭 村 上 克 恭

1.研究の趣旨
(1)研究の動機とねらい
  作文の重要性が叫ばれてから久しいが,本校児童の作文を読んでみると,必ずしも作文力が伸びてきているとはいえない。 例えば,作文を書く基礎能力がしっかりと身についていたいため,高学年になっても主述が合わなかったり,書きたいことが途中から変わったりして何を書こうとしたのかわからない作文が多く見られる。

 確かに.児童にとって作文は,読むことなどと比べて骨が折れるようだ。特に1年生にとっては鉛筆を持って文字を書くたけでも大仕事である。しかし,1年生は,文字を覚えた喜びや文字が書けるようになった喜びを持っていて,書くことにそれはど抵抗を示さない時期でもある。作文力を伸ばすためにはこの時期をのがしてはならないし,この時期にこそ作文を書く基礎能力を伸ばしてやらなければならないと考え本主題を設定した。

(2) 問題点
・「そとでおにどっこをしました。とてもおもしろかった。」
 (いつ,だれとなどがぬけている)
・「がっこうからかえって,こうていでいぬときょうそうした。ぼくはまけてしまった。」
 (気持ちや様子の表現がなく大ぎっぱな作文)
・「うちにかえって,おやつをたべました。それからてれびをみました。それから,しゅくだいをやりました。それから……。」
 (「それから」で長く続く作文)
・「きょう,ぼくは.がっこうでかざぐるまをみんなといっしょにまわっておもしろかった。」
  (主語と述語が照応していない)

 上にあげた例は手元にある児童の日記の中からいくつかひろいだしたものである。
 このように,入門期の児童は,文構成の基本の理解が不十分であるうえに,自分の行動や気持ちの書き方がわからない。これらの問題点は2年生や3年生にも多くみられる。

(3)原 因
 1 教師の側から
 ア 児童の作文の欠陥はわかっても,その原因がどこにあるのか,文章に即して深く検討しないため適切な指導ができない。
 イ 作文は読むだけでも多くの時間を必要とするので,個別に指導できず,全体の傾向を見て指導してしまうことが多い。
 ウ 作文指導は,児童のものの見方,考え方が重要な部分を占めるので個人差が大きくて一斉指導では効果が上がらない。
 エ 文章を書かせる機会が少くない。

 2 児童の側から
 ア 書く内容を自分は知っているので,読み手も知っているものと思い,だれと,いつどこで,何をしたなどの大切なことを省いてしまうことが多い。
 イ 出来事の様子や気持ちを表現する方法がわからない。
 ウ 主題をしぼり切れずに思い出したことを次から次と書きならべる。
 エ 主語とか述語とかの意識がないので,文の欠陥が何度読み返してもわからない場合が多い。
  これらの原因を検討してみると,児童の作文力を伸ばすためには,どうしても個別化をはかりながら,作文に必要な基本的事項を指導していかなければならないと考え次の仮説を設定した。

2.仮 説
 入門期の作文指導において,共通に経験したことを題材にして,カードを利用して個別化をはかりながら診断的,治療的に指導すれ


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