福島県教育センター所報ふくしま No.62(S58/1983.08) -021/038page

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4 結果の考察
 ア 題材についての順序性には三段階の作文とも問題点はなかった。これは「おにごっこ」という15分間の短い出来事を題材にして書いたためと考えられる。
 イ 「たれが」「いつ」などの5Wの欠落は事前の一斉指導では一人を除いて13人にあったものが,事後には9人が0になり残る4人も5Wの欠落数は三つ以内と減ってきている。
これはカードを利用しての個別指導で一人一人が文構成を理解して,5Wを意識して文を書くようになったためと考えられる。
 ウ 「おもしろかった」「たのしかった」「くやしかった」など,直接気持ちを表わす言葉が多く,1年生には様子などの間接的表現で気持ちを表すことはむずかしいようであった。
 エ 量的には,1人平均87.6文字と大幅に増加した。これは治療のための問い掛け文が子どもの思考活動を活発にして,よりくわしい文章を書かせたものと考えられる。定着度を見るための作文においても,文字数は事前の作文よりほとんどの児童が増えている。しかも,事前の時に少なかった児童はど増えている。このことは個別指導の効果であると考えられる。
 オ 質的にも,その時の様子や気持ちを詳しく書くようになり,かなりの向上が見られた。下記のものは,その変容の例である。

  事   前 事     後

 
はじめにおにになったのは村上先生です。まさやすくんが,つかまっておにになりました。  はじめは,村上先生がおにになって,ぼくたちをおいかけましたまさやすくんは,はしっていっしょうけんめいににげたのにとうとうつかまってしまいました。
 

(3) 結 論
  入門期の作文力を伸ばす方法として,カードを利用して個別化をはかりながら診断的,治療的に指導してきた。その結果,
 ア 入門期に身につけなければならない,5Wなどの文構成の基本を理解して,文章を書くようになった。
 イ 様子や気持ちを表す言葉も少しではあるが増加し,読み手によりはっきりとわかる文章が書けるようになった。
 ウ 量的な面でも,文字数,センテンス数ともに増加し,よりくわしい文章になった。
 工 質的な面でも,書こうとすることがはっきりして,文の続き具合いもよくなり,筋の通った文章が多くなった。
 よって,仮説は有効であったと考えられる。

5.反省と問題点
(1) 事前の作文を診断して治療する問い掛けの文にやや具体性を欠き,児童にわかりにくい点があった。入門期の児童には,例をあげたりしてわかりやすい問い掛け文を考えなければならない。
(2) 治療する個所が多くなりすぎて,時間内に終わらない児童もいたので,その児童の能力に合わせて,治療箇所をしぼる必要があった。
(3) 学習したことを毎日の日記などの文章に生かすように指導して,その効果も表れてきているが,反面,一文一文の中に,だれが,いつ,どこで,何をした,を書いて文章がくどくなる傾向も見られるようになった。
(4) 様子や気持ちを表す言葉も使えるようになってきたが,より適切な言葉を選んで使わせる指導法を今後研究しなければならない。

  参考文献
(1)教育研究法序説      福島県教育センター
(2)小学校指導書 国語編        文部省
(3)作文指導の体系と創造的展開   明治図書
(4)作文指導の原理と方法        光村図書


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