福島県教育センター所報ふくしま No.62(S58/1983.08) -023/038page
教育課程の編成(年間指導計画の作成),学年経営計画・学級経営計画,さらには,学習指導計画,生徒指導計画,そのほか,さまざまな計画の場面が考えられる。それらの計画において,重要な点は,それぞれの場面における「ねらい」の明確化である。
第二には,教育目標と,各具体的場面における「ねらい」との関連を検討しなければならない。
そのように,教育目標を中心にして,さまざまな場面を結び合わせてみると,いくつかの筋道があることがわかる。
(a)教育目標→教育課程(年間指導計画) →授業(学習指導計画)
(b) 教育目標→学年経営→学級経営
(c) 教育目標→研究・研修→個人(授業,生徒指導,学級経営) 教育目標具現化における筋道のたどり方をみると多くの学校では,先の調査からもわかるように,(b)の学年・学級という筋道で,それぞれの目標を設定して相互の関連が図られている。 ここで,特に大切なのは,先にも述べた(a)の筋道についても,さらに(c)についても関連を考慮しなければ,教育目標具現化の全体計画に広がっていかないのではなかろうか。 さらに,(a)・(b)・(c)の筋道などを立ててみることは,具現化の全体計画を改めて,意識し直すことにもなろう。そればかりか,全体を見通して,どのような具体的な場面において,具現化がしにくい部面かについても見い出され,その克服を図ることもできることになろう。
そこで,まず学年・学級目標と教科・領域目標とのかかわり合いについて考えてみたい。
学年・学級目標は,常時の教育活動を通して実現するものであるのに対して,教科・領域目標は, ある時期において達成されるべき系統性・順次性の強いものである。また,各教科にはそれぞれ独自の目標があり,その達成を目指すことが教育目標に近づいていくことになる。この独自な目標の実現化を図って,各教科には指導計画が確立されている。
このように,各教科の指導計画は,直接には教科独自の目標達成を目指しながら終局的には教育目標を志向するものであって,学年・学級目標と直接的に関連することは少ないようにみえる。しかし,教科の目標と学年・学級目標とは関連のうすいものであってよいものであろうか。
既に幾多の授業研究等で明らかにされてきたように,転移力のある質の高い学力は,よい学習集団の中でこそ育つとされている。集団の性格や構造・ふん囲気のいかんにより,子ども達の身につく学力や人間性に質的な変容をきたすものである。
この,よい学習集成を形成するのは不断の学年・学級経営であり,その指標となるのは学年や学級の目標である。
このように考えるとき,教科の目標を効果的に定着させるため,学年・学級の学習集用を方向づけていくところに,学年・学級の目標が相即不離のかかわりをもって深く結びついてくるといえるのである。
次に,考えておきたいことは,教科・領域の目標は,国の基準として学習指導要領に示されていることである。
学校において設定される教科・領域の目標や計画は,当然,この国の基準に志向しながら,学校の具体的場面をふまえた教育条件のもとに教育目棲と関連して具体化される。学習指導要領に示される各教科・領域の目標は,それぞれ固有の角度から全人的形成に寄与する点を明示している。
一方,教育目標は.子どもが卒業するまでに全人的形成の上から特に力を入れる観点を具体的に示している。両者を関連づける場合,この全人的観点という共通の場に立って,各教科・領域がそれぞれ教育目標のどの点について全人的形成の上から寄与すべきかを明確にしていく必要がある。
ただ,学習指導要領の教科目標は,一般的にみて全人的形成につながる目標と,教科固有の内容を展開するための目標との間に断層が感じられるのもある。指導計画の実践過程で,それを埋めながら,常に全人的形成の上からどう寄与できるかを追求することが大切である。
3.教育目標の教科指導への生かし方 教育目標が,実践において,指導者の念頭から消え去りやすいのは,目標が極めて,抽象的にしか表