福島県教育センター所報ふくしま No.63(S58/1983.10) -015/042page

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研究報告

到達目標に応じた段階別問題により学習の成立を図る指導


数学I「平面図形と式」の指導を通して

福島女子高等学校教諭 安 藤 昇

1.研究の趣旨
(1)研究の動機とねらい
 高校進学率の上昇にともない,高等学校には多様な生徒が入学してくる。本校(以下,本校とは前任校を指す)でも,ここ数年その傾向が著しい。本校の1年生に対して,入学当初に実施した調査によると,「自分で本校への進学を希望した」生徒が91%,また,「1日平均何時間家庭学習を計画しているか」との問いに「3時間以上」と答えた生徒が62%しめており,本校に入学し,希望を新たに学習しようとする意欲がうかがわれる。しかし,入学後1年半ばにして,学習に対する意欲を失う生徒もぽつぽつ出始め,学年が進むにつれて生徒の間の学力の差は大きくなっていくのが実状である。この傾向は,数学科の学習においては特に顕著である。

 本研究では,入学時にみられる生徒の学習に対する意欲を,どのようにすれば持続させ,向上させることができるのか,そして学習の習慣化をはかるにはどうすればよいか,を考察したい。

(2)問題点とその原因 本校新入生の実態調査によると中学校での数学の学習について「好きでした」22%,「どちらでもない」51%,「嫌いでした」27%であった。

 また,嫌いになった理由として,難しくてわからない,自分の勉強不足,先生の教え方が上位者中心に進められているなどをあげている。また教師側の反省として,1 教科書中心の一斉指導の授業になりやすく学習活動が不活発になっている。 2 問題練習の課題が一律で,難しい課題が多くなり学力の低い生徒はあきらめ,興味・的心がうすれてしまう傾向にある。 3 高い学力をもって入学してくる生徒も中位ぐらいの生徒に的をしぼった授業には,物たりなさを感じ,少しずつ意欲をなくしていく姿もみられるなどが指縞される。

 このようなことから,現在の授業に対して,つぎの点を改善しなければならない。

1 下位の生徒でも必ず理解しなければならない最低到達目標の設定と,それに対応した練習問題を作成する。

2 上位の生徒に対しては,より高度なものへ挑戦しようとする意欲を向上させたい。

3 個別指導では,達成可能な段階目標を一つ一つ形成させることで成功感を味わわせて,つぎの段階の目標への新たな意欲を喚起させたい。

2.仮説
(1) 仮説のための理論
 授業改善の基本的な考え方として,習熟度に応じて一人一人の学力の可能性を最大限に伸ばすことをねらいとする。
 1 教材の観点別到達目標を明確にする。
 2 習熱度に応じた3段階の到達目標を準備する。
 3 目標の達成,未達成を判定する形成的評価問題を作成し利用する。
 4 形成的評価テストの結果から補充的,治療的指導を実施する。

(2)仮説
 数学の学習指導において,つぎの手だてをすわば,習熱度に応じて到達目標に到達し,学習が成立するであろう。
1 各教材の導入時に,到達目標に応じた段階別問題一覧表を与える。
2 授業の中で,この段階別問題を学力差に応じて解決させる。
3 形成的評価問産により,個人どとの診断をおこない,補充的な個別指導を実施する。

3.計画
(1) 方法・対象・組織
 一群法 1年3組 個人研究

(2) 日程
 1 事前研究の段階 (5月〜7月)
 2 検証の段階   (8月〜11月)
  ア 教材の研究と段階別問題の作成(8月)
  イ 事前テストと意識調査(10月)
  ウ 検証授業 (10月)
  工 事後テストと意識調査(11月)


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