福島県教育センター所報ふくしま No.63(S58/1983.10) -023/042page
至る過程への積極的な取り組みこそが教育課程経営の今日的課題」と受けとめ,第3年次の理論研究を「教育課程の改善」においた。研究の主な内容は次のような理論構成によるものとした。
・教育課程の現代的把握と改善の必要性
・教育課程改善の意義
・教育課程改善のねらい
・教育課程改善の要件
・教育課程改善の着眼点
・教育課程評価・改善の実施方法
・教育課程評価用具の開発ここでは.理論研究のすべてについて紹介することはできないので,「教育課程の現代的把握」と「教育課程改善の意義」についての一郎を述べてみたい。
(1) 教育課程の現代的把握
現代の教育課程の特徴を把握する上で考えられることは,教育課程の構造を固定的に見ないで,柔軟に見ていこうとする考え方である。そわは,学校の教育目標,各教科・領域などの指導内容,指導計画,授業時数,さらには,教育組織や運営などについて,社会生活や文化の状況の変化及び児童生徒の変容の実態を直視しながら,それに即応した一層適切な在り方を求めて,弾力的に改善を図っていこうとすることである。
このような現代の教育課程のとらえ方の特徴は.このたびの学習指導要領の改訂にも強く反映されている。すなわち,教育課程の基準の改善についての答申の中に,「…‥‥‥教育課程の基準は,各学校における教育が創意を生かしてそれぞれの地域や児童生徒の実態に即して適切に行われるように,一層の弾力化が図られなければならないが,このことは,学校生活をゆとりのあるしかも充実したものにするうえでも特に必要である。」とある。このことは,教育課程を,これまでとかく固定的に見がちだった考え方から,弾力的に幅広くとらえようとすることを意味するものと言える。
このように,教育課程の構造を柔軟牲,弾力性をもったものと見るとらえ方が現代の教育課程把握の特徴であり,この考え方が強くなればなる程,教育課程の評価に基づく改善を日常的なものとし,自校の教育課程に検討を加え,常に改善充実を図って行くことが期待されるのである。(2) 教育課程改善の意義
教育課程の評価は,評価結果に基づいて有効・適切な教育の実施を目指して行われるものであり,編成・実施・改善一計画の全過程にわたって行われて初めて意義がある。教育課程の評価が改善の方策の立案に結びつかず,単なる評価に終わるようなことがあっては,評価本来の意義は発揮されないのである。教育課程の評価が,教育課程改善の強い動機となり,改善の方向に指針を与えてこそ評価を実施する意義があるのである。また,そこまでやってこそ教育課程評価の仕事は完結するのである。教育課程の改善とは.編成した教育課程をより適正なものに改めることであるが,これは,教育課程を地域や学校の実態及び児童生徒の心身の発達段階と特性に即したものにすることにほかならない。このような改善によってこそ,学校の教育活動が充実するとともに質も高まり,一層その効果をあげることが期待できるのである。したがって,各学校の教育課程の改善に当たって大切なことは,全教師が協力して,組織的・計画的に適切な評価の資料を収集し,分析して意欲的さと取り組んで行くことが強調されよう。
おわりに
以上,本年度の研究概要の一端について述べてきた。
本年度の研究紀要については,先にあげた研究構想のねらいに沿ってまとめ,本年度末に刊行する計画であるので,第1年次研究紀要第45号及び第2年次研究紀要第50号と合わせて活用し,教育課程経営上の諸問題解決の有効な資料として役立てていただきたい。
また,教育課程評価票試案について,その実用性・妥当性を検証し,改善を図るために,その試行と調査を依顆した研究協力校の諸先生方に敬意を表するとともに,本研究に関する教育現場の諸先生方の御意見を寄せていただければ幸いである。